卓話概要

2021年09月07日(第1762回)
リハコンテンツ株式会社 代表取締役社長
山下 哲司氏

なぜ水を飲むだけで「認知症」が改善するのか

★最優秀賞に選ばれて出版した本
 現在、私どもはデイサービス「リハプライド」の店舗を、全国に200か所展開させていただいています。ベンチャー経営者の祖として知られる藤田田さんに習ったフランチャイズという仕組みで、直営店が19店舗、その他182店舗はいろんな業種の方々にフランチャイズとしてご加盟いただき、展開をしていただいています。

 昨年、KADOKAWAさんから出版させていただいた書籍『なぜ水を飲むだけで「認知症」が改善するのか』(監修/竹内孝仁 国際医療福祉大学大学院教授・医学博士)は、私にとって3冊目の本となります。
 実は、KADOKAWAさん主宰の「知的生産塾」という塾が半年間開催されまして、私はそれに応募して、21名の塾生とともに、さまざまな学びをさせていただきました。
 その塾は、半年後に塾生が5分間の卒業プレゼンを行い、KADOKAWAさんの名だたる編集長の皆さんが審査員となって、最優秀賞1名を選び、それに選ばれると、KADAKAWAさんから出版を保証される、というコンテスト形式の塾でした。幸いにも私は最優秀賞に選ばれて、今日お持ちした書籍を出版させていただくことができた、という次第です。

★4つの基本
 人は、身体的自立、精神的自立、社会的自立の3つの自立が果たされることによって、社会で自立するといわれています。
 ご高齢者の方は、この3つの自立を果たしながら長い間生きてこられたわけです。ですから、高齢になることによって欠けてしまうのは、あくまでも身体的自立なのです。認知症も同じです。
 そこで今日は、次の「4つの基本」を覚えて帰っていただきたいと思います。
① 水分/1.5ℓの補給
② 運動/1日2km以上の歩行
③ 栄養/1日1500kcal以上摂取
④ 排便/自然排便を心がける
 ご高齢になって介護が必要になっても、この4つをしっかりケアすることができれば、明らかに介護の状態が改善していきます。

★1日に1.5ℓの水分が必要
 その中でもいちばん重要なのは、やはり水分です。水分が不足すると、体が動かなくなります。食欲が失われ、便秘を引き起こします。このように水分の摂取が、運動・栄養・排便にも密接につながっているからです。
 人が1日生活していると、尿・便、あるいは皮膚などから、2.5ℓの水分が体の外に出ていきます。つまり、それと同じだけの水分を毎日摂ることによって、体のバランスを保つことができるわけです。
 そのうちの1ℓは、3度の食事から摂っています。したがって残りの1.5ℓは、何らかの形で水分を摂らないとバランスがとれないのです。
 水分といっても、水だけではありません。お茶、牛乳、ジュースなど(アルコール以外)の水分を1.5ℓ摂ればいいのです。

★水分を摂ると、夜中にトイレに起きなくなる
 しかしながら、皆さんに水分を摂るようにお勧めしても、ちゃんと実行できる方は少ないのです。私たちがいちばん苦労するのはそこです。
 たとえば、トイレが近くなるからあまり水分は摂りたくない、という方が結構いらっしゃいます。しかし、ある施設の入所者の方で、水分摂取量と夜中に起きた回数を調べたところ、水分摂取量と反比例して、夜中に起きる回数が減ってきたのです。
 日中、水分をしっかり摂ると、もちろんそれに比例して尿の量は増えるのですが、尿というのは、体の老廃物を外に出してくれる働きもしますから、体が動きやすくなりますし、意識の覚醒も高くなります。
 日中の活動量が上がれば、その分、夜間ぐっすり眠ることができます。つまり夜中にトイレに起きなくなる、というわけです。
 実は、トイレに行きたくなるから目が覚めるのではなく、目が覚めるから尿意や便意を催すのです。夜ぐっすり眠ることができれば、夜中にトイレに行く回数は少なくなるのです。
 こういうことをしっかりお伝えすると、皆さんは積極的に水分を摂られるようになります。

★8割の認知症の方の症状が改善
 認知症について、200名の方を半年間かけて調べたデータがあります。
 平均水分摂取量が1.263ℓから1.7ℓに上がって、栄養も少し増え、運動の回数・時間も増えて、排便も少し増えました。
 たったこれだけのケアに取り組んだことで、なんと8割の方の認知症の症状が明らかに改善しているのです。
 このように、先ほど述べた「4つの基本」、中でも水分をしっかり摂ることによって、認知症が改善していく事例がたくさんありますので、これを実践して、皆さんの周りの方々から、認知症予防・改善を実現していっていただければと思います。