卓話概要

2021年04月06日(第1752回)
モリンホール(馬頭琴)奏者
ウルグン氏

モンゴルの曲と日本の曲

★草原で家畜を飼って生活
 モンゴルは、日本から飛行機で約4時間半の距離にあります。モンゴルといえば、皆さんは大相撲の朝青龍や白鵬のことを思い浮かべるのではないかと思います。
 モンゴルは、モンゴル国と内モンゴル自治区とがあります。ただし、内モンゴル自治区は、新疆ウイグル自治区やチベット自治区などのように、中国の自治区の一つです。
 モンゴル国の人口は約330万人で、首都はウランバートルです。主な宗教は、仏教、キリスト教、それにモンゴル土着のシャーマニズムがあります。モンゴルには海がなく、草原の国です。モンゴル人は、広い草原で家畜を飼って生活をしています。

★ゲルと共に草原を移動
 モンゴルの田舎の人たちは、主にモンゴルの伝統的な建物ゲルに住んでいます。ゲルは2時間ぐらいで建てることができます。モンゴルの気温は、冬は-40℃、夏は30℃を超えます。ただし、モンゴルは乾燥していますので、日本の暑さ寒さの感じとは少し違います。
 モンゴルの人は、ゲルを持って、年に4回ぐらい草原を移動します。家畜は草を食べるので、一か所にとどまっていると草が無くなってしまいます。そのため季節ごとに移動しながら生活をするのです。
 モンゴルでは「5家畜」といって、5種類の家畜がいます。馬、ヒツジ、ヤギ、ラクダ、そして牛です。モンゴルのラクダは、2こぶラクダです。
 モンゴルの人は、乳製品、ヒツジの肉、粟などをよく食べます。ミルクティーや馬乳酒もあります。

★男の3つの芸
 モンゴルの伝統的な文字は、縦文字です。上から下、左から右へ読んでいきます。モンゴル国は、旧ソ連の影響で、1940年代からキリル文字に変わりました。内モンゴル自治区は、伝統的なモンゴル文字を使っていますが、近年、小学校の教育で、モンゴル文字が使えなくなっているところがあります。
 モンゴルの民族衣装は、モンゴル語で「デール」といいます。部族や地域によってデールの形も少しずつ変わってきます。冬には革のデールを着たりします。
 モンゴルの祭りを「ナーダム」といいます。夏には祭りが多く、特に7月11日と12日には、国の大きなお祭りがあります。そのお祭りで必ず行われるものが3つあります。モンゴル相撲、競馬、弓矢です。これができないとモンゴルの男ではないといわれます。これを昔から男の3つの芸といいます。モンゴルの子供は、5、6歳ぐらいから馬に乗ります。

★人間の声に最も近い音
 日本の小学校2年生の国語の教科書に、「スーホの白い馬」という物語があります。その物語に出てくる楽器が「モリンホール(馬頭琴)」です。
 モンゴル語で、馬のことを「モリ」、楽器のことを「ホール」といいます。それで「馬の楽器」という意味になります。モンゴルでは、お祝い事や結婚式などでは、必ず先に馬頭琴を弾いて、それから式を行います。モンゴルでは馬頭琴は、幸運を呼ぶ、そして魔除けの力があると信じられています。
 馬頭琴は、弦が2本しか見えないのですが、実は細い弦を150本ぐらい束ねて作られています。もともとは馬の尻尾で作られていたのですが、今ではナイロン弦で作られているものも多くなっています。
 バイオリンやチェロなどの楽器は、弦の上から指で押さえますが、馬頭琴の場合は、左手の指の裏側、爪のところで、弦の横から押さえます。なぜそういう複雑な押さえ方をするかというと、いちばん良い音色を出すためです。馬頭琴の奏者はみんな、人間の声に最も近い音を出すために努力します。