卓話概要

2020年01月28日(第1720回)
オペラ歌手
新藤 昌子氏

世界の国歌 学ぼう!聴こう!~2020東京五輪・パラリンピックに向けて

★敬意と威厳をもって

 私は2006年頃から、各国駐日大使館の大使とのご縁で、その国の建国記念日や本国の要人がお見えになられた席で、相手国の国歌、そして「君が代」を歌うことを続けてきました。
 2020年、いよいよ今年、東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。昨年、ラグビー・ワールドカップで、日本人の「おもてなし」として、国歌を歌うことが非常にブームになりました。
 私は、国旗や国歌を正しく丁重に、そして敬意と威厳をもって扱うことを、子供たちに伝えていきたいなと思っています。
 オリンピック競技が19競技開催される江東区の教育委員会から依頼を受けて、2017年から、全部で70校ある江東区の小中学校で、国旗と国歌の講座を続けてきました。現在、68校が終わったところです。

★100か国の国歌を、それぞれの言語で

 国歌を歌うために、世界中の国について、その国の成り立ちや、国歌ができた背景などを学ばせていただきました。国旗や国歌を学ぶことは、国際理解の第一歩であると思って、偏ることなく、おのずから祖国愛をもって、堂々と国歌を歌える子供たちが増えたらいいなと願っています。
 そもそも国旗や国歌の演奏は、国の行事や国際的なスポーツのイベントなどにおける恒例の催しとなっています。その役割は、来賓への歓迎の気持ち、日本流に言えば「おもてなし」ということになるのですが、それを敬意と威厳をもってしっかり伝えること、それがとても大事ではないかと思います。自国の国歌を聴くと、おのずから自国への連帯感が生まれたり、一体感がもたらされるのではないかなと思っています。
 こうした活動を続けてきたら、かれこれ100か国の国歌を、それぞれの言語で歌えるようになりました。
 国歌の研究家はたくさんいらっしゃいますが、私は歌う研究家として、その国の、一級の詩人と一級の作曲家による芸術作品を、皆さんに楽しんでいただきたいと思っています。
 私はいつも、偏りなく、右翼でも左翼でもなく、「仲良く」と言ってコンサートをしています。

★本日の国歌プログラム

*カテゴリー1(行進曲マーチ系)
アメリカ・イタリア・フランス・中国

*カテゴリー2(国家・国王・君主を賛える歌)
イギリス・ドイツ

*カテゴリー3(民族色の強い歌)
イスラエル

*日本(「君が代」の歴史、フェントン作曲・奥好義作曲)
 実は、私たちがいま歌っている「君が代」は、2代目の「君が代」です。初代の「君が代」は、1870(明治3)年に、フェントンというイギリス人によって作曲されました。フェントンは、薩摩軍楽隊に西洋音楽を教えた指導者です。
 「君が代」の歌詞は、「古今和歌集」の中の詠み人知らずの和歌が元になっています。
 しかし、フェントンの「君が代」は、日本人に合わないということで、10年で使われなくなりました。
 そして、彼の弟子であった奥好義(おく・よしいさ)が代わって作曲したのが、今の「君が代」です。作曲者が林廣守(はやし・ひろもり)という名前になっていることが多いですが、彼は奥好義の上司だった人です。