卓話概要

2020年01月14日(第1718回)
㈱パグズ代表取締役
久保江 勝二氏

人工知能活用の真髄

★私たちの仕事

 私たちの会社㈱パグズは、私が昔スーパーコンピュータをやっていた関係で、NASAなどに行って、現場の技術者さんたちと非常に仲が良くなったのですが、そうした人たち(「匠チーム」と呼んでいるのですが)と一緒に、企業や大学の先生などの案件をいただいて、それを事業化する、という仕事をしています。
 現在、「匠チーム」には、75名が登録されています。チームの皆さんは、世界一だと言われていたときのエンジニアばかりで、コミュニケーション能力はあまりありませんが、技術的にはものすごいものを持っている人たちです。その技術を若い人たちに伝承しないと、あと5年ぐらいで滅んでしまうので、そのノウハウをぜひ次の世代に伝えていきたいと思っています。

AIの歴史

 AI(人工知能)は、歴史的には1956年にスタートしています。最初は迷路やパズルゲームなどをやっていました。
 第2次AIブームは、知識表現ができるということで、1980年にスタートし、1995年頃まで続きました。この間に、私もチェスのプログラムを作りました。
 次に、2015年頃に革命的なことが起こりました。ディープマインドという会社の3名のエンジニアが、AIが自分で考えるプログラムを考えました。これがディープラーニング(深層学習)と言われているものです。
 彼らは、そのプログラムをインターネット上に公開してしまいました。なぜかと言うと、このプログラムは軍事的に使われる可能性があって、そのままでは自分たちの命が危なかったからです。
 その他、現在では、AIによる自動運転や芸術への応用(自動作曲など)などが行われてきて、今日に至っています。

★herbox(ハーボックス)

 私が開発したプログラムですが、7種類のハーブを、自分の気分に合わせて自動的にブレンドしてくれる、というものです。「herbox(ハーボックス)」という名前で商品化されています。
 専用のアプリに、いくつかの項目を入力すると、7種のハーブの中から、その日の体調や気分に合わせてAIがブレンドしてくれます。
 たとえば、「恋で胸が苦しいときは何を飲んだらいいか」と尋ねると、「これとこれをブレンドして飲むといいよ」と教えてくれます。

★ディープラーニング専用のAIチップ

 このたび「匠チーム」は、ディープラーニング専用のAIチップを、世界で初めて作りました。5ナノ(ナノは1ミリの100万分の1)の細さの線で配線するチップによって、人間の脳のニューロン(神経細胞)と同じような動きをするコンピュータです。このチップを100万個ぐらい集めて、1つのコンピュータにすると、人間の脳と同じぐらいの学習ができるような仕組みになるのではないか、ということで、これから2年半ぐらいかけてチップの商品化を進めようとしています。
 これは世界初の試みです。しかし莫大な費用がかかります。これをニューヨークで発表したら大受けで、いま海外のベンチャー企業から資本の話が来ています。でも、せっかく日本で作ったのだから、アメリカに取られてしまうのもどうかな、というのがあって、いい方法がないかと考えているところです。

★人に寄り添うコンピュータを

 私の目標は、人に寄り添う結果を出せる、人に近しい答えを出せるコンピュータです。
 しかし、まだ「反射行動的」なものしかできていません。たとえばカメラで、異常な行動をしている人間だけを見つける、といったようなことです。
 人に寄り添うようなコンピュータにしようと思うと、非常にいろんなことを考えなくてはいけません。まず、コミュニケーションができなくてはいけないし、状況を理解できなくてはいけません。それから仮設の立案ができなくてはいけませんし、それに基づいた仮説検証ができ、経験に基づく学習ができて、論理的、多面的、探求心といったものを入れて初めて、知性を持ったAIというものが出来上がるのです。
 こうしたAIは、年間1000億円ぐらいかけて、5年ぐらいやれば出来上がると思います。日本ではAIは文科省がやっていますが、世界では国防省がやっています。文科省がAIをやっているのは日本だけです。AIは国防のレベルの問題です。そのへんをよく分かって運用しないと話になりません。
 私は、戦争をやらないような、やれないようなコンピュータシステムを作りたいと思っています。