卓話概要

2021年03月23日(第1750回)
日本大学名誉教授 ミャンマー国立海事大学名誉客員教授
堀田 健治氏

SDGs、ロータリーと共に作る若者の未来

★フィリピンでの環境プロジェクト
 私は、日本大学理工学部の海洋建築工学科で35年教員をしてきました。専門は海洋環境工学で、主として沿岸域利用と環境管理について研究をしてきました。
 私は1985年から、当時の建設省が進めていた、日本の海岸建築技術を東南アジアに広めるというプロジェクトに関わる機会を得て、以後10年間、毎年2か国ずつ東南アジア諸国を訪問し、政府、大学、学協会などと共にセミナーやシンポジウムを開催してきました。
 その中で私は、これまでフィリピンで、以下のような環境に関するプロジェクトに関わってきました。
①世界の火薬庫と呼ばれている南沙諸島、フィリピンはじめ中国、台湾、ベトナム、マレーシアが領有を主張している海域の水産資源保護と平和利用を、米国海軍研究所から3年間資金を受け、フィリピン大学の専門家ならびに関係国の大学研究者を含む国際チームを作り、成果として、この海域の平和利用に資する活用方策と、これを当該国が共同管理することを国連へ提言しました。
②セブ島ギマラス沖合でのタンカー座礁事故に伴い、開発したオイル除去剤を持参し、マングローブ林、海岸でのオイル除去活動を行い、当時、現地TVで大きく報道されました。
③国立フィリピン水産・海洋研究開発局と共同で、バタンガス、ラグナベイでの、同じく開発した、水処理剤ならびに海洋施肥材を用いたキリンサイ(海藻)の育成に関わる養殖支援活動。
④マニラ近郊河川(オバンド川、世界で最も汚れた川といわれていた)での水質改善調査活動。
⑤エビ、淡水魚養殖池、その他水族館等の水処理活動。

★バギオ基金への新しい提案
 こうした活動の中で、私は教育が非常に大事だということを感じました。国連が定めた「SDGs(持続可能な開発目標)」の中にも、「4. 質の高い教育をみんなに」とあるように、「教育」の目標が掲げられています。
その意味でも、ロータリークラブの比国育英会バギオ基金が、シスター海野の遺志を継がれて、これまで長い間にわたって育英資金を支援されてきたということは、まったくすばらしいことだと感銘を受けた次第です。
 そこで一つ提案があります。フィリピンのバギオは学生の町で、多くの語学留学生が来ています。現地大学、専門学校などとタイアップして、日本語学校あるいはコースを作り、完璧な日本語が話せる人材を、日本に就労を目的として来日させ、これをロータリーが日本で支援する仕組みを作る、というのはいかがでしょうか。
バギオの若者にとって、語学を武器に日本に留学あるいは就労をして、自分の夢や希望に向かって自己実現を果たしてほしい、なおかつ家族や地域そして最終的には自分の国に貢献できるような人に育ってほしいという考えから、そのためのきっかけ、インセンティブになるのではないかと思うのです。
 一方、日本のロータリークラブにとっては、能力ある留学生や就労者など、日本を支えてくれる人材の育成のために、彼らが学校を卒業した後も、長期的に親身になって相談にのってあげられる、そんな見守りも含めた関係を構築することによって、SDGsもさることながら、フィリピンと日本両国の持続的繁栄と友好に貢献することになるのではないかと思うのです。
 私は現在、ミャンマー国立海事大学の客員教授をしていますが、同じく私が関係している「日本ミャンマー友好協会(AJMMC)」は、日本とミャンマーの企業を結びつける活動を行っています。併せて、ヤンゴンで日本語も教えており、この海事大学、ヤンゴン工科大学、あるいは専門学校の学生が、ここで夜間や祭日に日本語を習っています。
 驚くことに、彼らはほぼ完璧な日本語を話し、それぞれ専門教育を終えた後、日本の企業に就職します。言葉に問題がなく、高等教育を受けているため、企業からは引っ張りだこです。すでに大学から数百人日本に来て、日本人と同等、あるいはそれ以上の給与を得ている人はざらにいます。

★日本語の町バギオとして
 もう一つは、キリンサイという海藻から液肥を作り、この肥料を農業に使う。このようにバギオの農業と漁業の連携をしながら、採れたものは六次産業としてお互いに流通し合う、フィリピンでこういう活動をするというのはどうでしょうか。
併せて、ここで留学生なり奨学生にも関わってもらい、アルバイトもしてもらえる。同時に、日本語の町バギオとしてアピールできるのではないかと思います。
 現在、日本はさまざまな面で、東南アジアの人たちに支えられています。その意味でも、バギオに人たちと、日本語を中心としながら、何か新しい関係ができて、お互いがハッピーになるようなことが考えられないか、と思って今日はお話をさせていただきました。