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★2つの大きな勘違い
2024年の大統領選挙で、トランプが「大勝」したように思われていますが、実際はそうではありません。得票率はトランプ49.80%、ハリス48.32%と1.48ポイント差でした。これは今世紀で最も僅差の選挙で、誤差の範囲です。
いまのアメリカは、もう皆さんが知っているアメリカではありません。この20年、30年で大きく変わりました。いま未曽有の分断・拮抗にあります。ですから、物事はなかなか動きません。
もう一つの勘違いは、「上下両院は共和党が多数派なのでトランプが何でもできる」と思われていますが、大間違いです。
現在の119議会開始時で下院は、共和党220議席、民主党215議席で、その差5というのは史上最も少ない差です。上院は、共和党53、民主党47(無党派2含む)です。これはトランプにとって、全く頼りない議会です。
★トランプの大統領令
アメリカの政治の建付けは、議会が最初に立法を進め、大統領が署名して、それで新しい法律が作られる、大統領は公約を新法に落とし込むこと、そのための「説得する能力」が重要なのです。「大統領令」は、法律を解釈して政策に落とし込んでいくものです。
ところがトランプは、この流れを迂回します。トランプの大統領令は、議会を通さないハリボテの打ち上げ花火の大統領令です。議会を通さない政策なので、法的に微妙で、予算が付きません。
本来、立法後に政策を具体化するために行政命令として出すのが大統領令ですが、分断と拮抗の中、これまでの「説得モデル」が機能せず、議会を迂回する手段になっているのです。
トランプの公約には、不法移民対策の強化や輸入品への関税措置、連邦政府機関の縮小などがあります。
不法移民対策の根拠法は、何と1798年制定の敵性外国人法です。
関税の権限は議会にあります。しかし世界が対応を迫られ、各国がトランプにぬかずく結果になっています。
矢継ぎ早に大統領令を出すことで、司法手続きが追いつかず、執行されてしまうのが現状です。適法性に疑義があっても、一定程度の不法移民を追放することに成功し、支持者は歓喜しているのです。
洪水のように発令すること(洪水戦略)で裁判所が決断できない、決定が遅くなる、トランプはこれを狙っているわけです。
★トランプの支持率
ギャラップの調査によると、2009年のオバマの就任時の支持率は68%、不支持率12%、2021年のバイデンの就任時の支持率は57%、不支持率37%でした。
一方、2025年のトランプの就任時の支持率は47%、不支持率48%です。初めて支持しない人のほうが多かったのです。しかしこれでトランプ政権が人気がないとは言えません。共和党支持者の支持率はなんと91%、民主党支持者の支持率6%。8月になって支持率は7ポイント下がり40%、不支持率56%に。しかし共和党支持者の支持率は2ポイント上がって93%に、民主党支持者の支持率はわずか1%です。これがアメリカの現実です。
★キリスト教福音派
トランプの主な支持層は、キリスト教福音派と呼ばれ、聖書を一字一句信じている人たちです。多様性や妊娠中絶を認めず、気候変動対策にも否定的な立場です。また熱烈なイスラエル支持者でもあります。トランプの政策そのものです。大学はその反対なので、補助金を削るなどして圧力をかけているわけです。
日本は、このように分断されたアメリカを俯瞰するような高みに立って、自由貿易を守りながら、気候変動対策もしっかりやっていく。世界各国の日本に対する信頼度は80%を超えているところも多いのです。ですから、いま日本にとっては、国際的なリーダーシップを取れる非常にいいタイミングではないかと思います。