卓話概要

2025年01月21日(第1880回)
フィンランドの専門家
ラウラ・コピロウ氏

北欧フィンランド~サウナのあるライフスタイルとビジネスについて

★SAUNAはフィンランド語
 去年も1月にお世話になりましたラウラと申します。私は3月で日本在住14年になります。
 フィンランドは世界幸福度ランキングで、7年連続1位に輝いています。フィンランドの人口は約550万人ですが、サウナの数は350万あります。「サウナ(SAUNA)」というのはフィンランド語です。サウナは健康に良くて、日本のお風呂のような存在です。フィンランドでも生まれてすぐサウナに入る習慣があります。また、お互いに肩書を気にせず平等に居られる空間で、自然との共存が感じられる場所でもあります。こういったことが、幸福度にも一部貢献しているのではないかと思います。
 日本でも2018年ぐらいから、サウナの第三次ブームが起きています。

★サウナは国ができる前からあった
 フィンランド人は、国が存在する前からずっとサウナに入っていて、そういった伝統文化がユネスコの無形文化遺産に登録されています。日本の温泉文化も同じぐらいポテンシャルがあると思うので、いつか登録されたらいいなと思っています。
 フィンランドでは、サウナがライフスタイルの一環として楽しまれています。
 フィンランドのキリスト教前の宗教観は、ある意味日本と似ているところがあって、サウナを守ってくれる妖精がいるとか、森に神様がいるから入る前に許可を得るとか、そのようなことがありました。また、サウナで出産するとか亡骸を洗うとか、サウナを神聖な場所だと感じるところがあります。
 「正しいサウナの入り方は?」とよく聞かれるのですが、実はありません。「自分で考えてください」としか言いようがありません。
 フィンランド人は生まれてからサウナに入っているので、体で感じるのです。こういう温度が好きとか、今日はこういう気分だから2分にしたいとか、30分にしたいとか、人によっても日によっても違います。ですから「人それぞれ」と答えるしかないのです。
 フィンランド人はシャイなので、普段なかなか話せないことでも、サウナだと話しやすくなるのです。サウナは、そういったコミュニケーションツールにもなっています。
 フィンランドには、国と法律が存在する前からずっとサウナがあったので、サウナに関する法律はほぼゼロです。日本では火災法とか公衆衛生法とかいろいろあると思いますが、フィンランドでは、サウナは国や法律を超える存在になっているのです。

★サウナの進化
 サウナの進化の歴史を簡単に整理すると、

  1. サウナ小屋
     最初はサウナ用の小屋がありました。
  2. 公衆サウナ
     日本でも都市化が進んで「銭湯」ができたように、フィンランドでは「公衆サウナ」ができました。
  3. 自宅サウナ
     電気ストーブが普及して、自宅にサウナを作れるようになり、「公衆サウナ」は数が減りました。
  4. エンタメ・サウナ
     「観覧車サウナ」や「アイス・サウナ」のような変わり種サウナがたくさん生まれました。
  5. レストラン付きサウナ
     いまトレンドになっているのが「レストラン付きサウナ」です。

 そのほか、もう一つトレンドになっているのが「アイス・スイミング」です。日本人は昔から「水風呂」に入っていたと思いますが、フィンランドにはあまり水風呂という文化はありません。ただし湖があったら飛び込みます。もともとサウナと水風呂がセットという考え方がありません。
 ただし、極端に冷たい水に浸かるのが健康法としていま流行っています。頭がすっきりするので、忙しい人ほどハマるようです。

★レストラン付きサウナ「ロウリュ」
 いまフィンランドで人気の施設「ロウリュ」は、レストラン付きのサウナです。サウナよりむしろレストランとバーの面積のほうが広くなっています。ただし収益は半々ぐらいのようです。
 フィンランドのサウナには昔から必ず「サウナ・ラウンジ」というのが付いています。サウナに入る時間は人によってバラバラなので、サウナの合間か出た後に、そこでビールを飲んだり軽食を摂ったりしながら、お互いに話ができるスペースが作ってあるのです。
 フィンランドでは、サウナは季節を問わない観光資源になっていますので、最近フィンランド人は積極的にビジネスにしようとしています。外国人がサウナのためにフィンランドに来たというと、フィンランド人はすごく喜びます。サウナは観光資源だけでなく、国際交流のツールにもなっていると思います。