卓話概要

2026年06月02日(第1932回)
㈱MM総研理事長・国際大学GLOCOM客員教授
関口 和一氏

海外見本市に見る世界のデジタル新潮流と日本の課題

7つのデジタル新潮流
 ざっくり言うと、いま世界で以下のような7つぐらいの新しいデジタル技術が広がっているように思います。

  • 人工知能(AI)
  • クラウド(SNS、金融、Eコマース)
  • 次世代光通信(IOWN、光電融合)
  • 次世代半導体(GPU、超極細MPU)
  • メタバース(XR、3D)
  • ユニバース(衛星通信、HAPS、宇宙船)
  • 次世代モビリティ(EV、空飛ぶ車、ドローン)
     こういう新しい技術の流れを見るには、やはり展示会が一つの場であり、主だったものとしては、次の5つぐらいが挙げられます。
     CES(ラスベガス、1月、AI・モビリティなど)
     MWC(バルセロナ、3月、モバイル)
     VivaTech(パリ、6月、デジタル)
     IFA(ベルリン、9月、家電)
     CEATEC(東京、10月、デバイスなど)

★ CES 2026のテーマは〈どこでもAI〉
 「CES 2026」の国・地域別の出展者数は、米国、中国、韓国が圧倒的多数で上位を占めており、日本はフランス、台湾に次いで6番目となっています。
 今回のCES 2026のキャッチフレーズは、「AI Everywhere」で、「どこでもAI」が全体を貫くテーマになっています。主な注目分野には、以下のようなものがあります。
 Agentic AI (自律的に動くAI)
 Physical AI (ロボットなど現実を動かすAI)
 Edge AI (クラウドに依存しないAI端末)
 Smart Glass(AIを活用したウエアラブル)
 Longevity (長寿・エイジングケア)
 New Mobility(SDVや超小型モビリティ)
 CES Foundry(AIや量子技術の実装)
 特に昨年あたりから米NVIDIAのジェンスン・ファンCEOが「Physical AI」に喧伝しており、NVIDEAの時価総額は、今やアップルを追い抜いて4.6兆ドルとなっています。
 そのPhysical AIの中で注目されているのが「ヒューマノイド」です。CESでも40社以上の企業がヒューマノイドを出展していました。中でも「ユニツリー」や「エンジンAI」など中国の企業が圧倒的に多くなっています。
 ボクシング、ダンス、受け身、卓球などをするヒューマノイドや、AIを活用したパワーショベル、自動運転トラクターなどの展示がありました。
 このように、リアル世界がAIやインターネットなどのデジタル技術によって劇的に変化しているのです。

★日本は有名ブランド企業が相次ぎ撤退
 こういった展示会で、かつては日本企業が花形だったのですが、残念ながら日本はどんどん撤退してきています。アナログ時代のスタンドアローンの家電製品では良かったのですが、今の時代はネットワークと結びついた形の製品が主流となり、サービスやコンテンツを一緒に載せるような、付加価値の高いサービスを提供できる企業が強くなったからです。
 その中でスマートホーム分野で世界をリードしているのが韓国企業です。サムスン電子は「SmartThings」のブランドで展開し、LG電子は「Affectionate Intelligence」として、家庭用AIロボットの「CLOiD(クロイド)」や「Q9」を投入しています。
 日本の国際的プレゼンスが大きく損なわれたきっかけは、コロナ禍で展示会から撤退したことが大きく、その間隙を縫って元気のある中国や韓国の企業が入ってきて、日本の出る幕が無くなった、という構造になっています。
 それでも頑張っている日本企業としては、ソニー、ホンダの本体はいなくなりましたが、子会社のソニー・ホンダモビリティが出展していました。またこれから期待が持てるという意味では、「TIER IV」「Shiftall」「mui Lab」といった日本のベンチャー企業が新しい顔ぶれとして出展していました。

★世界のデジタル見本市に見る日本の課題

  • 世界が注目するCESへの出展は必須
    モビリティ、ライフテック、エンタメ、ヘルステックなど
  • 日本企業のトップは世界に目を向けよ
    賀詞交換会も重要だが、市場はグローバル
  • 日本発のデジタル技術を世界に発信を
    「IOWN」や楽天の仮想化技術は日本の砦
  • イノベーション力の強化が今後の課題
    規制緩和、ダイバーシティ、デジタル変革がカギに

★デジタル改革で急ぐべきこと

  • 次世代情報通信インフラの整備
    5G、ローカル5G、Wi-Fi6、6G、クラウドなど
  • 情報通信政策の一本化と行政のデジタル化
    縦割りの排除、DX戦略、教育・医療のオンライン化
  • 産業分野のデジタルプラットフォーム確立
    自動運転、ドローン、空飛ぶクルマなど
  • デジタル人材・ベンチャー企業の育成