卓話概要

2026年04月14日(第1927回)
株式会社GenesisAI代表取締役社長CEO・ 北陸先端科学技術大学院大学 客員教授
今井 翔太氏

生成AIで世界はこう変わる

★松尾豊先生の教えを受けて
 私は、日本のAI研究の第一人者である松尾豊先生の教えを受けました。同じ研究室の先輩に国政政党「チームみらい」党首の安野貴博氏がいらっしゃいます。
 私は研究室からは一旦独立して、研究用の会社を創業し、また地元石川県の大学の東京サテライトで客員教授もしています。その他、国家戦略のアドバイザーや、いろんな省庁の委員などもしています。
 松尾研究室に在籍時代に、『生成AIで世界はこう変わる』という本を出版させていただきました。現在、15万部のベストセラーになっており、おそらく日本でいちばん売れている生成AIの書籍かと思います。

★AGI:汎用人工知能
 我々人工知能研究者は、AGI(Artificial General Intelligence:汎用人工知能)なるものを作ろうとしています。今年、人工知能研究70周年を迎えますが、この70年間に我々は何をしてきたかというと、人間とまったく同じことができる人工知能を作ろうとしてきたわけです。これが今年できるのではないかという議論があります。
 ChatGPTなどはコンピュータが言語を喋ったというだけでしたが、フィジカルAIなるものが出てきています。洗濯物が畳める、工場の労働もできるといった、物理空間で何かができるAIです。
 また私自身が文科省とやっていることですが、AI for Sienceという分野があります。これは人工知能が科学研究をするというものです。人工知能が、人間のトップ科学者でさえ発見できなかったものを発見する、ということが実際に起きているのです。

★スケーリング則
 人工知能の「スケーリング則」というのがあります。これは学習データの量、計算資源(スーパーコンピュータ)、ニューラルネットワークの大きさ、この3つをひたすら拡大し続けることによって、人工知能の性能は無限に向上することが約束されている、というものです。
 これは極論すると、お金をどれだけかけられるかという話になります。ChatGPTやGeminiのようなAIを一つ作るのに、かつてはスカイツリーを1本建てるくらいの予算が必要でした。いま最先端のAIを作れるのは、何百億、何千億という予算を用意できるビッグテックやその支援を受けたオープンAIなどに限られます。
 このスケーリング則の存在によって、ほぼゴールは見えている、あとはリソースを投下して大規模に学習していくだけで、我々研究者が目標とするところに到達できる、ということが事実上約束されているわけです。その意味では非常に有難い理論だと言えます。

★AGIはいつ実現するのか
 AGIがいつ実現するのか、というのは我々のたいへん興味のある話題です。5年前には70年後ぐらいというのが一般的でした。それが最近では、学術有識者や開発者本人などの意見をまとめると、あと数年だろうと言われています。
 アンソロピックのCEOダリオ・アモデイは、間もなく人間の寿命が150年になる可能性が高い、精神疾患の治療やがんも撲滅できるだろう、と言っています。これは先ほども触れたように、人工知能が科学的発見をする、それをサポートする時代になっているということです。
 元OpenAIのレオポルド・アッシェンブレナーという人がいます。ChatGPT2というのは、2019年に最先端だったAIです。その頃から人工知能が喋り始めたのですが、幼稚園レベルの会話しかできないと、我々はからかっていました。それから4年経って出てきたGPT4は、突然大学院生レベルになりました。これもスケーリング則にのっとっていたからです。人工知能が人工知能の研究をするレベルになれば、AIは加速度的に発展することになります。それを使って経済、科学、政治などはすさまじい変化が起きるだろうと言っています。

★デジタル・ゴッド
 アメリカのビッグテックは、どういう意識でAI開発競争をしているのか。「デジタル・ゴッド」という言葉があります。「機械の神」です。人間のできること、できないこと、全部をできるAI、まさに「神」です。今のAIの発展の先には、そういうものができるだろうということを、ビッグテックの指導者層は大真面目に考えています。
 これにスケーリング則が合わさると、とんでもない投資が始まることになります。ある人工知能企業のトップは、30ギガワットの電力が必要だと言っています。これは原発30基分の電力に相当します。別の企業のトップは、マンハッタン島全体を覆う規模のデータセンターを作ると言っています。こうした競争の果てに「デジタル・ゴッド」があるのかもしれません。

★制度やインフラ環境を整える
 AI研究の発展スピードは研究者の予想を上回っており、おそらく数年以内にAGIが登場すると思います。デジタル空間はAIエージェントで相当長い作業ができるようになると思いますし、昨今発展しているフィジカルAIで肉体労働もできるようになります。
 こうなると人工知能技術だけでなく、周りの制度面やインフラ環境を整えるような人たちのほうが重要になってくるのではないかと思います。