★新型コロナウイルス対策に集中
バイデン大統領の支持率は50%台の半ばといったところです。前大統領のときは40%前半以上には行かなかったので、この数字は相当いい出来だと思います。
そうは言っても、相当な数の共和党支持の人々は、断固としてバイデン政権に反対していますので、2つに分かれた国を何とか統治していかなければいけないという難しさを抱えているわけです。
バイデン政権は、新型コロナウイルスの対策を何よりも集中して行いました。とりわけワクチンを打つことに照準を定め、ピーク時は、一日当たり300~400万回接種できる態勢を整えました。バイデン政権のこの新型コロナ対策は、アメリカ国民の多数から支持されました。
現在はむしろ、余ったワクチンを今後どう世界に供給するのか、という課題に移っているところです。
一方で、アメリカには宗教・思想上の理由から、ワクチンを忌避する人たちも根強くいます。この人たちにワクチンを打ってもらうことはなかなか難しく、今後の大きな課題となっています。
★小さな政府から大きな政府へ
レーガン大統領の時代から、アメリカでは「小さな政府」という考え方が非常に浸透してきました。ある時期まで、それはかなりうまく行っていたのですが、いろんなひずみも出てきました。
たとえば学歴別失業率ですが、大卒以上と大卒未満とで、非常に明確な差が常に出てくるようになってきました。
あるいは、上位1%の人がアメリカの資産の大半を持っていると言われますが、確かに圧倒的な資産格差が生じてきていることも事実です。
こうした格差をこれまで政策的に広げてきたところがあるので、「小さな政府」の考え方が限界に来ている、ということが言えます。
そして、コロナ禍の昨年9月に実施された、「小さな政府がよいか、大きな政府がよいか」というアンケートにおいて、ついにその比率が逆転したのです。世論も大きな政府を求めるように変わってきていて、それをうまく捉えたのがバイデン氏だったと思います。
バイデン政権は、インフラ・研究開発等への投資を中心とした「米国雇用計画」、および低所得層・労働者・教育支援等、「人的インフラ」への投資を中心とした「米国家族計画」など、大きな政府の成長戦略によって課題解決を目指しています。
★対中政策の転換
これまで、どちらかというと中国を甘く見ていたアメリカですが、その認識を改めたのはトランプ政権になってからです。今では中国を明確に「競争相手」として認識し、「仮想敵国」に近い表現をしています。ただし、かつてのソ連と違って、経済を断ち切ろうということではありません。
そのため、中国抜きでアメリカに確実に物が調達できるように、半導体や医薬品など重要4品目で供給網の見直し、あるいは製造業の国内回帰、先端技術の育成といった、脱中国依存と米国内での基盤強化が柱となった産業政策への転換が図られています。
さらに今年に入ってからは、米中の対立は、「民主主義」対「権威主義」、「民主主義」対「専制主義」といった区分けもされています。人権(ウイグル問題)、民主主義の価値(香港)、安保(台湾、南シナ海)といった問題が表面化しています。
その中で、台湾情勢への懸念が強まっています。今すぐに有事があるというわけではありませんが、今後お互いが勘違いして有事が起こりかねない、というリスクが従来に比べると少し高まっていると思われます。
★米中対立と日本の役割
米中の仲が良ければ、日本はその間に埋もれてしまう恐れがある、という懸念が深まっていたのが、ここ30年ぐらいだと思います。皮肉にも、米中が対立する関係、中国がアメリカの競争相手になったことで、アメリカにとってみれば、日本はかけがえのない、アジアで最も頼りになる国として、その価値が再評価されてきているところがあります。
ただ、日本の対中貿易の大きさを見ると、米中対立は一時的には、日本とアメリカの間でプラスに働くかもしれませんが、日本の国益になるかというと、決してそうではない、そういう難しい関係にあるわけです。米中の間を取り持つことは難しくても、お互い破滅的なことにならないように、何とか働きかけをしなければ、というあたりで菅総理も悩まれているところだろうと思います。
今の日本の課題は、遅れているワクチン接種を進めていくことで、他の国と同様にコロナが収まってくれば、どんどん景気が回復していくというステージに入っていくだろうと思われます。その先は、こういう立場になってきたからこそ、改めて日本の果たす役割が増えてきているところもある、ということが言えるのではないかと思います。