卓話概要

2022年01月18日(第1773回)
一般社団法人 縄文道研究所 代表理事、元 東京エグゼクティブ・サーチ㈱代表取締役社長
加藤 春一氏

今注目される縄文式経営とは

★縄文人の世界性、偉大性、パワー
 縄文時代とは、約16,500年前から2,500年前まで続いた時代です。
 環境考古学者の内山純蔵博士からの情報によれば、北南米すなわちアメリカエスキモー、アメリカ、カナダからアステカ、インカ、チリに至るまで、 縄文人のDNA と一致することが、ノースカロライナ大学でほぼ実証されています。
 ヨーロッパのバルト3国のエストニアでは、 縄文土器と同じ土器が発見されています。
 また、シュメール文明の楔形文字が、日本で850か所発見されています。
 こうしたことから、縄文文化の担い手である縄文人の世界性、偉大性、パワーの歴史的足跡を知ることができるのです。

★縄文文化を発見した5人の功労者
* エドワード・モース(大森貝塚発見)
* 岡本 太郎(縄文土器の芸術的価値)
* 梅原 猛(縄文文化の精神性・宗教性)
* 小林 達雄(縄文文化と現代との連関性)
* 斎藤 成也(DNAを遺伝子を通じて解明)

★縄文文化の現代への影響
 衣食住すべてにわたって、現代の生活にその影響力を持っています。
① 衣生活/三宅一生がパリコレで「セッションワン」として貫頭衣―和服を発表。
② 食生活/和食が健康食としてユネスコ無形文化遺産に登録。食材の多様性=貝類350種、魚類200種、昆布90種、鳥類80種、哺乳類60種など、約1,500種類。
③ 住生活/隈研吾氏設計による代々木オリンピック競技場は、木を多く用い、自然との一体性を現代に反映。
 梅原猛先生は、日本人の精神性の中で、縄文から受け継いでいるものは、次の3つであると言っています。
① 復元力/② 環境適応力/③ 日本化力

★「武士道」と「縄文道」
 新渡戸稲造博士の「武士道」は、BC 660年の神武天皇即位以降の日本人の倫理を、神道・仏教・儒教の神仏儒思想として書かれています。
 私の唱える「縄文道」の精神とは、BC660年以前、約14,000年間で形成された日本人の精神のことで、和辻哲郎博士の『日本倫理思想史』によれば、「古代、縄文時代において、太陽を崇拝し自然と共に生きることが、人々の倫理観の中心」というものです。
 これらのことから、武士道と縄文道とを合わせることによって、日本人のアイデンティティーを世界に説明することができると考え、私は5年前に特許庁に「縄文道」を申請し、無事商標登録されました。
 その縄文道は、「普遍の道」と「大和の道」からなります。
〈普遍の道〉
自然との共生―─環境調和
平和な生活 ―─平和思想
母性尊重  ―─男女協働参画
富の平等性 ─―倫理資本主義
〈大和の道〉
匠の道/芸術の道/武士道の道(倫理)/武術の道

★縄文道経営とは
 縄文人は14,000年の間、狩猟・漁猟・採集生活を主とし、一部農耕生活も始めていました。自然と対峙・共存しながら平和な生活を営んでいたのです。その意味で、縄文人はリスクテイカー、イノベイター、チャレンジャーでした。
 したがって、そこから縄文道経営というものを考えると、以下のようになります。
〈組織論〉としては、
① OPEN/開放的、透明性、グローバル化への対応、高い倫理経営
② FLAT/水平型、DX型、インターネット社会への対応
③ SIMPLE/単純化、簡素化、規制緩和の推進、分かりやすい
④ SMALL/小規模組織、分社化による機動力増加

〈経営者個人〉としては、
① 五感を鍛え、六感を養い、直観を重視
② 不可知論、形而上学の重要性(宗教、哲学、特に倫理観、道徳心)
③ AI、ロボット、DX、デジタルへの理解
④ 教育的(受け身)思考から啓育的(自発的、積極的)思考への転換

★縄文道経営を担う新縄文人の「8C」
COURAGE/現状打破への勇気
COMMON SENSE/逞しい常識
COMMONLY USEFUL SKILL&KNOWLEDGE /世界で通用する技能と知識
COMPETENT/成果を出しうる意識と行動―能力
COMMUNICATION SKILL/伝達能力
COMPLIANCE/遵法精神
COOPERATIVE MIND/協力、協調の精神
CULTURALLY BARRIER FREE/異種文化の壁を乗り越えられる