卓話概要

2026年05月19日(第1930回)
STEAMS LAB JAPAN株式会社 顧問
福島 誠司氏

AI時代の昭和枯れすすき

★「昭和枯れすすき」は私のこと
 昭和49年、私が小学生の頃、「昭和枯れすすき」という曲が大ヒットしました。「貧しさに負けた~」という歌を聴いて、げんなりしながら学校に行っていた記憶があります。ただし、すすきは見た目と違って、なかなか味わい深い植物だということを後で知って、今日の演題にさせていただきました。「昭和枯れすすき」は私のことだと思ってください。

★無い無い尽くしの4人で起業
 私は現在59歳で、生まれは東京、故郷は九州の佐賀県です。
 早稲田大学を卒業後、宝石のダイヤモンドの商社に入りました。10年間、営業、製造、商品企画、経営企画などに携わり、イスラエルにも3年駐在しました。起業メンバーのうち3人はイスラエルで出会いました。
 IT業界の知識も、資本も、経営経験も、人脈も、信用も、ゼロ、無い無い尽くしの4人だったのですが、なぜか〈行ける〉と思ったのです。私たちにあったのは、〈事業アイデア〉と〈ガッツ〉と〈行動力〉だけでした。
 2000年、私が33歳のとき、ITバブルが弾けた直後でした。当時私たちが起業した事業モデルは、イスラエル発のインタネットオークションサービスを〈B to B to C〉で消費者向けに展開していこうというネット事業でした。ネット通販、eコマースの黎明期でした。
 私を含めた4人の起業動機は、端的に〈お金〉でした。半年ぐらい経過した頃、稲森和夫さんの名著『実学』に出会い、愕然とします。そこには、〈考え方〉×〈情熱〉×〈能力〉=成功、と書いてありました。しかし、この〈考え方〉にはプラスとマイナスがあって、プラスの場合はその積は非常に大きなものになるが、マイナスの場合は最悪の結果が待っている、ということでした。
 私たちの〈考え方〉はたぶんプラスではないと思い、このとき資本政策のあり方やお金に対する考え方を4人でとことん議論しました。

★〈黒物家電〉で再スタート
 創業までの間に資金の問題などで頭を悩ませることが多々ありましたが、それらを通じて、改めて稲森さんの考え方やこころざし、袖触れ合う縁を形にしていく絆づくりの力の必要性、などといった大事なことを学びました。
 資金調達累計が2億円超になり、ようやく開業、インターネットオークションがスタートしました。
 ところが、私たちの会社はサービスを開始して事業売上は伸びていくのですが、粗利が薄く、なかなか営業利益が出ないことが分かり、結局、事業を撤退することになりました。
 その外に何ができるか考えたとき、eコマースの世界で、ネット通販が伸びることは分かっていましたので、自社のショップを作ることにしました。〈黒物家電〉といわれる、携帯周りのガジェット、モニター、パソコン、テレビといったものです。これが当たって、売上は倍々ゲームで5年ほど走りました。

★〈白物家電〉のメーカーに
 この後、リーマンショックが起こります。日立、シャープ、東芝といった名だたる大手メーカーとお付き合いをしていました。ある日、呼ばれて、「これからは商社でなくメーカーになりなさい」と言われました。この言葉で私たちは、なるほど〈ブランドだ!〉と気づいたのです。
 素直に話を聞いて、ブランドを作るための勉強をしました。中国の深圳に事務所を出し、中国の工場と直接契約をしました。今度はホームベーカリー、オーブントースター、コーヒーメーカー、炊飯器といった、小型の〈白物家電〉を作ることにしました。
 メーカー業として新たな道を歩み始め、会社も黒字化した頃、資本を頂戴していたある上場企業から、私たちの会社を子会社にするという話がありました。しかし結局、私たちは自主独立の道を選ぶことにしました。このとき安藤さんと出会い、いろいろ助けていただいたのです。

★事業を譲渡
 この間、辛い家庭問題も経験しましたが、2018年、会社は設立後18年経過しました。中国の深圳、香港に海外法人を設置し、台湾、韓国、インドネシアにも輸出を始めました。年商40億円、従業員は100人ほどになりました。
 ところがこの後、不適切な会計やリコールなどがあって、事業は停止する事態になりました。しかし私的整理に邁進し、新しいスポンサーに会社を買っていただくことになり、そこに事業を譲渡、従業員もそのまま移行して、商売は続くことになりました。

★新たに教育の世界へ
 私が自分の会社を去った後、ご縁があって、教育の世界から声がかかりました。〈子育て〉と〈教育〉の事業です。子どもたちの〈生きる力〉を育てることがテーマです。これは公教育の現場でも気づいているのですが、相当時間がかかることが分かっています。そこで民間でファンドを作り、教育の世界に良い風穴を開けることができれば、と思っているところです。