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★50周年を迎えたアジア学院
アジア学院は、去年50周年を迎えました。学院には、今はアジアだけでなく、世界中から学生が集まっています。
場所は、栃木県那須塩原市にあります。学院の母体は、東京町田市にあった農村伝道神学校で、農村の牧師を養成する学校でした。その中の東南アジア農村指導者養成所というコースから、1973年に独立しました。
アジア学院は、農村指導者研修がメインのプログラムです。草の根のコミュニティの自立のために、アジア、アフリカ、ラテンアメリカ、中南米、太平洋諸国の農村指導者を育成しています
学生は個人では応募できません。必ず送り出し団体の推薦が必要になります。アジア学院の研修が終わると、必ず元の団体に戻ることが義務付けられています。団体の多くは農村地域社会の弱者やマイノリティに奉仕する団体ですので、帰国すると学校で学んだことを活かして活動します。
特徴としては、9か月のトレーニングで、毎年15か国ぐらいから30名程度を受け入れています。キャンパスでは全員で共同生活を行います。有機農業で90%以上の高い自給率を誇っています。言語は英語を共通語としています。
アジア学院の卒業生は、これまで62か国、1,425名に上っています。卒業生は、村の持続可能な農業と食料安全保障を確立したり、マイノリティ・低カースト・障がい者など、虐げられた人々の自立を支援したり、それぞれが世界中で自立した農村コミュニティを作るために重要な役割を果たしています
★研修の3つの柱
アジア学院の研修には、キリスト教を母体とした3つの柱があります。
*仕える指導者
トップダウンの指導者ではなく、いちばん下で人々に仕えるという姿勢をもったリーダーシップを提唱しています。
*フードライフ
食と命が中心にある生活。食べ物を自給しているので、農作業をする時間が多いです。一緒に働いて、みんなで食を分かち合うことを大事にしています。
*学びの共同体
先生と生徒という関係でなく、スタッフと参加者として平等な関係でお互いに学び合う、コミュニティとして一緒に成長していくことを目指しています。
★2019年~2028年は「家族農業年」
世界の農村人口は34億人で、世界の人口の42.5%を占めています。その中でも5億7000万世帯を占める家族農業世帯は、世界の農家の90%以上を占め、世界の食料の大部分を生産しています。農村はこのように誰にとっても大切で、食料自給率が39%で、輸入に頼る日本も無関係ではないと思います。
国連は、2019年~2028年を「家族農業年」(Year of Family Farming)とし、「家族農業は食料安全保障、貧困削減、環境にとって極めて重要」だとしています。
★なぜ農村指導者なのか?
しかし世界、特に開発途上国の農村で起きていること、それは「貧困」です。コロナ禍前ですが、11億人が深刻な「多次元貧困」(教育・健康・生活水準の3つの次元で算出)の中で暮らしており、中でも多次元貧困層の84%が農村部にいるとされています。
そうした貧困にさらに追い打ちをかけるのが、環境問題・環境破壊です。それが農村の生活、耕作を非常に厳しいものにしているという実態があります。
このように、貧困、不健康、不安、争いを生むさまざまな要因は、農村地帯にこそ多く存在する、ということを私たちは覚えていなければなりません。それは世界情勢と私たちの生活に直結していて、だからこそ農村指導者の育成が必要だと思っています。
農民(民衆・草の根)の指導者は絶対的に不足しています。農業学校は世界中にありますが、農村指導者の学校はありません。学校の名前に“rural”という文字を付けている学校は、本当に少ないと思います。私たちは農村指導者養成にフォーカスをし続け、その意義を認識しています。
★「土からの平和」
アジア学院は創立50周年を迎えて、新たな歩みを続けています。
「共に学ぼう、農村の未来のために」というテーマを新しく掲げ、もっと総合的にアプローチをして、学生だけでなく、もっと多くの方に来ていただきたいと思っています。すでに大学、教会、YMCAなど、いろいろな団体から来ていただいていますが、学院をもっと開かれたものにしたいと考えているのです。
また、いま世界中で紛争が起きている中、上から力で解決するのでなく、食と命を大切にすることで平和を作っていこう、ということで、「土からの平和」を強く提唱しています。