卓話概要

2020年10月06日(第1738回)
国際文化教育協会 理事長
竹元 正美氏

皇室について

★皇室の特徴
 日本は、神話につながる王朝を有する唯一の国です。万世一系の皇統で、男系による継承が大きな特徴になっています。
 女性天皇は、推古天皇から江戸時代の後桜町天皇まで、10代、8人いらっしゃいます。
 皇室の役割としては、宗教的役割、権威、学問・教養、文化的役割、社会的役割、国際親善、歴史上の重要な役割、といったものがあるかと思います。
 宗教的役割とは、宮中祭祀で、天皇陛下は常に国民の安寧と幸せを祈っておられる、ということです。
 権威としては、叙勲、そして内閣総理大臣、最高裁判所長官は天皇陛下が任命します。それから以前は改元権がありました。
 学問・教養を深めることでは、歌会始がありますが、明治天皇は和歌を10万首、大正天皇は漢詩を、歴代最多の1367首作られたということです。学問については、今も講書始として続いています。
 文化的役割についてはさまざまありますが、雅楽、古式馬術、鴨猟、鵜飼、宝物の維持管理などがあります。
 社会的役割については、公平に慈しみの心をもって、現在でも施設や被災者の慰問などを行われています。
 国際親善については、天皇陛下は「大使100人分の働きをされる」と言った人がいましたが、本当は大使が何百人集まろうと比較できないレベルでの貢献をされます。
 歴史上の重要な役割としては、長い歴史の上で重要な役割をされた天皇陛下は多々あると思いますが、私は個人的には、昭和天皇がポツダム宣言受諾のご聖断をされたことが一番だと思っています。

★平成から令和へ
 私が1970年に外務省に入省したとき、同期のみんなと、皇太子殿下(今の上皇様)のところにお招きをいただきました。そのときのことで、今でも一つだけ覚えていることがあります。それは皇太子殿下が、「立派な人やお金持ちは黒塗りの車に乗っています。ですから黒塗りの車は高級車だと思われています。ところが、肌の黒い人はなぜ差別されるのでしょうね」とおっしゃったことです。今の上皇様は、その頃からいかに公平な心をお持ちかと思いました。
 また上皇様は、「日本国民の幸せ及び世界の人々の幸せを祈ります」とよくおっしゃいました。この言い方も、いかに公平な方かという一つの表れだと思います。東日本大震災の直後、東京都では計画停電が実施されました。お住まいの千代田区では実施されませんでしたが、上皇さまは、計画停電が実施されている地域に合わせて御所の電気を自ら停められました。
 上皇様は小学校6年生のときに終戦を迎え、疎開地から東京・原宿の駅に降り立ったとき、一面の焼け野原を目にされました。このことが平和への願いの原風景にあるのではないかと思います。平成最後のお誕生日には、「平成が戦争のない時代として終わろうとしていることに安堵しています」とおっしゃいました。
 今の天皇陛下は、水の研究を熱心にされています。「水の問題への取り組みで得られた知見も、これからの務めの中で、国民生活の安定と発展を願い、また防災・減災の重要性を考えていく上で、大切に生かしていきたいと思います」とおっしゃっています。
 上皇様も今の天皇陛下も、プライベートのときには、非常に質素な生活をされています。
また今の天皇陛下は、即位のときに「自己の研鑽に励みます」とおっしゃいました。59歳という歴代天皇の中で第2位の高齢で即位されたにもかかわらず、そのようにおっしゃいました。いかに謙虚な方かと思います。

★皇室の課題
 皇后様のご体調の問題はずっとあったわけですが、令和に入ってからは、ご公務も順調にされておられ、ご回復されてきていると思っています。
 秋篠宮家の長女・眞子様のご結婚問題です。今年9月の秋篠宮皇嗣妃殿下のお誕生日に際してのお言葉に、「長女の気持ちをできる限り尊重したいと思っております」というのがありました。小室さんとの結婚に前向きとの印象を受けました。
 皇位継承問題については、男系継承というのはお父様を辿っていくと神武天皇につながるというものです。したがって、愛子様も男系ですが、一般の男性と結婚してその子供が生まれた場合には、女系になるわけです。秋篠宮家の悠仁様はどなたと結婚しても子供は男系になります。男系を続ける限りは、次の天皇陛下は秋篠宮皇嗣殿下、それから悠仁様ということになるわけです。次世代の皇位継承者は、悠仁様だけですので、今後、皇位の安定継承を図っていく観点から皇室典範を如何に改正していくかが課題となっております。