卓話概要

2023年11月28日(第1839回)
外資系コンサルファーム
増田憲介氏

Japan as No.1をもう一度

★モノ作りからコト作りへ
 私は、デジタルトランスフォーメーションを推進しているコンサルティング会社にて、主に経営や戦略のコンサルティングを行っています。
 私が専門としているのは「Reinvent Product & Service」、日本語では、モノ作りからコト作りに転換を中心とした事業転換をご支援しています。以前、私はリコーという精密機機の会社で、10年以上、新規事業の立上げや会社の構造改革などを担当していました。

★1979年の『Japan as No.1』
 『Japan as No.1』というのは、アメリカの経済学者エズラ・ヴォーゲルが1979年に出版した書籍です。当時は日本経済が非常に速いスピードで成長していた時期であり、「知識」「政府」「政治」「大企業」「教育」「福祉」「防犯」という7つの視点から、日本企業が強くなった要因を多角的に分析されました。
 その後日本は、失われた30年が続くわけですが、私としては1979年の「Japan as No.1」のような時代をもう一度取り戻せないか、という気持ちで今、仕事をしています。

★いいものは何でも日本製
 「バック・トゥ・ザ・フューチャー」という映画の中に、非常に興味深いシーンがあります。
 1955年のアメリカでは、日本の製品は決して質の良いものではない、というのが常識でした。ところが、1985年の未来から1955年時代に来た主人公は、「いいものは何でも日本製だよ」と言います。これは、30年の間に時代が大きく変わったことを象徴するコミカルなシーンです。
 当時、ニューヨークの小学校にて人種差別を感じていた私自身にとっても、日本人として誇りを持った瞬間でした。

★「リコーシータ」を開発
 私がリコーに入社した3年後、リーマンショックが起きます。会社の売上・収益が一気に落ち、創業以来初の人員整理も行われました。
 そんななか、会社の立て直しに向け、私が最初に挑戦した新規事業企画が「カメ長」です。カメラの中長期経営計画のことであり、今までにない新しいカメラを作ろうというコンセプトのもとに、一つのプロジェクトを立ち上げました。
 3年後、出来上がった製品が世界初のコンシューマ向けの360度カメラ「リコーシータ」です。表と裏にレンズが付いており、ワンショットで360度空間すべてを撮影することができます。このカメラは業界内において、一定の評価を得たのですが、会社の赤字規模に比べ、この新規事業はそれを覆すまでに至りませんでした。この失敗経験を通じて、自分自身はもう少しビジネスの勉強をしなくてはならないと感じ、ビジネススクールに通い始めました。

★不動産業界から問い合わせが
 そんななか、この「リコーシータ」がある法人業界からお問い合わせをいただくことになります。それは不動産業界です。現場に行かなくても、室内をウェブ上で360度見ることができる、いわゆる「デジタル内見サービス」を行うことができるのです。
 またビジネス展開の際には、カメラ単品売りではなく、ビューワー数に連動したリカーリングビジネスへと変えたのです。この仕組みによって、この360度ビジネスは徐々に大きくなっていきました。いわゆる「モノ売り」から「コト売り」への転換を、作り出すことができたのです。

★マーケティングの講師として
 この成功経験からの学びを活かし、日本企業特有のイノベーション・ジレンマから脱却すべく、さまざまな企業にお伝えしていこうと考え、ビジネススクールで、いま経営戦略やマーケティングの講師を担当しています。
 不動産業界における360度カメラを活用した内見サービスというビジネスモデルへの転換、つまり、プロダクトアウト(モノ売り志向)から、マーケットイン(コト売り志向)に変えていく必要性を教壇からお伝えしています。

★日本の企業全体の底上げに寄与したい
 今年は生成AIが非常に話題になっていますが、私もその技術とビジネス側面を学び、どのように企業に活用していくか、活用支援を行っています。そして、その成功事例をさまざまな産業にまで拡げていくことで、日本企業全体の底上げに寄与していきたいと思っています。
 その結果「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の主人公たちが思い描いた未来を、コンサルティングという仕事を通じてぜひ実現し、「Japan as No.1」をもう一度を取り戻したいと思っています。