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★東トルキスタンとウイグル人
私は2016年に日本に来ました。2年間日本語を勉強した後、徳島大学で3年間学び、去年大学院を卒業しました。いま日本ウイグル協会で、ウイグルの人権活動などを行っています。
ウイグル人が暮らしている地域「東トルキスタン」を、中国では「新疆」と呼んでいます。「新しい国境」という意味ですが、中心ではない、周辺の地域という意味もあります。
この地域には、5、6世紀頃、中国の隋や唐の時代から、たくさんのトルコ人が暮らすようになって、「トルキスタン」と呼ばれるようになりました。中国では「西域」と言われていましたが、トルコ系の民族から見れば、いちばん東に位置する地域なので、「東トルキスタン」と呼んでいます。
一方の、カザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタンなど、中央アジア5か国が属する「西トルキスタン」は、19世紀にロシアの支配下に置かれました。
西トルキスタンの国々は、ソ連崩壊後に独立しましたが、東トルキスタンは、清朝、中華民国、中華人民共和国と変わっても、引き続き中国の支配下に置かれています。
現在、ウイグル人は90%以上が、いわゆる「新疆ウイグル自治区」に暮らしています。私たちは中国では「少数民族」とされていますが、人口は1162万人です。言語はウイグル語、文字はウイグル文字で、宗教はイスラム教スンニ派がほとんどです。
★中国政府のウイグル人政策の歴史
中国政府は1949年からこの地域を支配し始めましたが、それからウイグル人への弾圧が始まりました。
冷戦時代には、人民解放軍の王震による弾圧があり、また中ソ対立の最前線となりました。文化大革命時代には宗教や教育が禁止され、ウイグル社会に大きなダメージを与えました。
冷戦後、江沢民の時代には、いわゆる「7号文件」によって、ウイグル地域でウイグルの文化や伝統を肯定してはいけない、地域を支配する幹部は中国内陸部から派遣する、といった政策を実行しました。
習近平時代になると、中国政府は陳全国という、かつてチベットを弾圧した強権的な人物をウイグルに転任させました。そして「脱過激化条例」なるものを作って、ウイグル人を弾圧し始めました。
★さまざまなウイグル人弾圧政策
中国政府のウイグル人弾圧政策の一つは、人口抑制です。漢族の大量入植、計画出産政策、ウイグル人の若者の内地連行などによって、東トルキスタンのウイグル人の人口構成は、1944年には77%だったのが、2020年には45%まで減少しています。
また中国の憲法では、信仰の自由がある(36条)と定められていますが、2017年に「脱過激化条例」が設置されてからは、髭を生やしたり、ヒジャブを被ったりすると「過激」とされ、強制収容所に入れられます。そのほかにも、モスクの65%が破壊され、イスラムの文化遺跡も30%が破壊されたという報告があります。
ウイグル語の使用制限は、「文化的ジェノサイド」とも言われています。1950年代、私たちの民族学校では、漢語は選択科目でしたが、1960年代になると、漢語が必須の科目になりました。2000年以後、中国政府は「双語教育」(バイリンガル教育)を打ち出しましたが、実際の授業は漢語で行われ、ウイグル語は単位にならない一科目となりました。学校の先生も教える意欲がなく、ウイグル語は事実上、教育の場から排除されています。
中国の核実験はすべて、東トルキスタンの「ロプノール」という所で行われました。ここはトルファンやウルムチといった古い歴史を持つ大都市から200~300kmしか離れていません。1964年から1996年までに46回の核実験が行われ、1967、73、76年には水爆の核実験も行われました。
★ウイグル問題を巡る国際社会の動き
中国のこうした一連の政策に対して、ウイグル人も反発しました。その主なものが、1990年の「バレン郷事件」、1997年の「グルジャ事件」、そして2009年の「ウルムチ事件」で、それぞれ大きな犠牲を伴いました。
2013年に習近平政権が発足してから、中国では強制収容所が大規模に作られるようになりました。国連は、100万人のウイグル人が収容されていると報告しています。中国政府は現在、AI、ビッグデータ、監視アプリなど、先端技術を使ってウイグル人を監視しています。
国際社会もウイグル問題を巡って、さまざまな動きを見せています。アメリカは「ジェノサイド認定」を行い、中国に制裁をかける法律を作っています。欧米諸国でも、8つの国の議会がジェノサイド認定をしています。日本も今年の2月1日、中国の人権問題を非難する国会決議を行いました。
現在、世界の国々は、人権問題を含めさまざまな問題を抱えていると思いますが、ウイグル問題は、国際社会から見れば、すでに人権の範囲を超え、「ジェノサイド」に該当しており、人々が容認できない領域に達していると思います。