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★3つの問題
今日は3つのことをお話しします。
1つ目は、今の環境問題で何がいちばん問題か、それは「変化のスピードが速すぎること」。
2つ目は、「私たちホモ・サピエンスの特徴は何かということ」。
3つ目は、「世界の賢人といえども、方策が定まらないこと」。それは各々の方策に矛盾があるからで、それを「カオス」と私は呼んでいます。さらに、トランプ大統領の登場で、そのカオスはさらに複雑化し「カオス2」になりました。
★速すぎる「現代環境の変化」
46億年間(地球史)=1年間とすると、ホモ・サピエンスが現れた20万年前は12月31日23時37分、20世紀は23時59分59.3秒に相当します。現代の特徴は、①急速+加速的変化、②自然の変動範囲を超えた、と言えます。
CO2濃度と気温について、42万年前からの傾向と、今後100年の予測を示したグラフがあります。それを見ると、20世紀からグラフが急速に立ち上がっていることが分かります。
南極やグリーンランドに降った雪が氷になるときに閉じ込められた空気を分析すると、昔(何万年前)の二酸化炭素を復元することができます。氷床コアには、木の年輪のように「年縞」というのがあって、それを一つずつ数えていくと、昔の二酸化炭素濃度を正確に測ることができるのです。
それを見ると、産業革命以降にCO2の排出量が増加していることが分かります。特に20世紀に入ってからの気温上昇は、それ以前の時代に比べるとはるかに大きいことが分かります。
2020年に、地球上に存在する生物の量(重さ)が、人工物(コンクリート・骨材など)の量を超えてしまい、それが2040年には2倍になるとの研究成果が発表されました。
★Homo sapiensの特徴
ホモ・サピエンスの特徴として、①巨大な脳、②寒冷地までの分布、③直立二足歩行、といった点が挙げられます。
皆さんは、全身100Wで発熱しています。そのうち脳は23W、体のその他の部分は77W発熱します。私たちが頭を最大限使うときには、43W発熱し、じっくり考えることができます。
人類は、肉や魚などの高カロリー食を摂ることで頭が良くなったといわれています。それによって石器を改良して動物などを獲物にすることができたわけです。
一方、現代のコンピュータは電力を大量に消費します。AIでルービックキューブを解かせたら、原発3基1時間分の出力を要しました。一方わずか23Wでそれを解く人がいます。ホモ・サピエンスの頭脳は非常に優れているのです。
AIには、人間の能力を超えてしまう「2045年問題」と、この「電力消費問題」があります。
★カオスの時代へ突入
石油は、現在のところ、これまでに消費した全量の2倍ぐらい残っています。石油を消耗しないようにするためにカーボンニュートラルをやる、と誤解している人がいます。違います。使ってしまうと、気候と環境の大災害が起こるからカーボンニュートラルを実施するのです。これこそが①農業革命、②産業革命、③情報革命に続く「第4の文明革命」なのです。
【カオス1:極端気候】
IPCCという気候の専門家たちは、2100年に、産業革命から温度が2.0℃上昇すると、サンゴ礁の99%は無くなってしまうと言っています。
いま全世界で339億t/年のCO2が放出されています。産業革命から現在まで気温が1.1℃上がりましたが、このまま行くと2070年には平均2.0℃になってしまいます。日本はさらに上昇して3.5~4.0℃ぐらいになると予想されます。
【カオス2:海洋酸性化】
CO2が海水に溶けるとpHが下がって、海の酸性化が進みます。それによって生物の炭酸塩殻が溶けていきます。サンゴ、有孔虫、円石藻、ムール貝、真珠、クリオネ、ウニなどが溶けて、生態系に重大な影響を及ぼす可能性があります。それを防ぐには二酸化炭素を減らす以外にありません。
【カオス3:金属汚染】
EV自動車生産にはコバルト、ニッケルなど大量の金属資源とエネルギーが、太陽光発電にはアルミニウム、風力発電には亜鉛(防食)が必要です。このように電気社会は、化石燃料社会よりも有害物質が排出されるので危険です。
【カオス4:アンモニア】
アンモニアは燃やしてもCO2は出ません。したがって石炭火力の燃料を全てアンモニアにすると、日本のCO2排出量を半減させることができると期待されています。
一方で、アンモニアは肥料の原料です。空気中の窒素を化合させてアンモニアを作り、それをもとに硫安などの化学肥料ができます。世界中の食物の40%はこの「ハーバー・ボッシュ法」による窒素固定由来の肥料に依存しています。いま地球上には80億人の人間がいます。もしアンモニアを燃やすために化学肥料をやめるとしたら、「32億人の命が亡くなる」と言っているのと同じことになるのです。
【カオス5:考える力】
哺乳類は、人間に飼われて安全な食べ物と場所を提供されると、脳が小さくなるという宿命にあるようです。人間もAIに飼い慣らされると脳が小さくなって、「考えなくて幸せ」という人が増えてくる可能性があります。今こそ、ホモ・サピエンス(知恵のある人間)の真価が問われているのではないかと思います。