卓話概要

2026年01月27日(第1919回)
BRUNSWICK GROUP(ブランズウィック・グループ)・ 東京オフィス マネージング・パートナー
唐木 明子氏

マルチステークホルダー・エンゲージメント戦略と アクティビスト対応

★ブランズウィック・グループ
 私は2023年にブランズウィック・グループというファームに転籍して、そこでマルチステークホルダー・エンゲージメントに取り組み始めました。ブランズウィックは40年ほど前に設立されたイギリス発祥のコンサルティング・ファームです。日本には5年前に進出し、事務所を構えて活動しています。
 企業を取り巻く株主、経営陣、従業員、取引先など、多様なステークホルダーが利害関係によってお互いがぶつかり合う、多くの利害関係をかいくぐり、協力を得ながら、あるいは少し距離をおきながら、企業がやりたいことを達成するご支援を行っています。

★ブランズウィック・グループの独自性

  1. 戦略思考
      場当たり的ではなく、計画を立て、順序立てて考えていくことはもちろん大切です。
  2. 多様性
      世界には、理解し合えない意見も含めて、多様な意見があります。多くの立場を代表する多様性があると、世の中の理解が深くなります。
  3. エンゲージメント力
      多様な意見を受け入れながらエンゲージしていく今後重要となる能力です。

★ステークホルダーの複雑な関係性
 企業を取り巻くステークホルダーは、株主が中心にあり、経営陣、従業員など契約関係に応じて徐々に同心円的に広くなるという、秩序立った図式で考えられることが多いです。
 しかしブランズウィック・グループは、現実は様々な要素で絡まり合ったもっと複雑なものではないかと考えています。インターネットやSNSなどの登場で、誰でも情報を発信できるようになると、その関係の複雑さは一層加速されています。
 多くの日本企業が新しい領域や市場に展開することで生き残りをかける中、複雑な、かつ、自社にとって新しいステークホルダーと適切なエンゲージメントを行うことがたいへん重要になっています。そのご支援をさせていただいているのがブランズウィック・グループです。

★「価値創造」と「価値伝達」
 日本でこれまで重視されてきたのは、ものづくりやサービスの設計もそうですが、価値を創るということでした。しかし「価値創造」と同じぐらい大事なのが「価値伝達」ではないかと思います。「価値創造」と「価値伝達」は車の両輪のように、両方やっていかないと企業の営みとしては完結しないのではないかと思います。価値を伝達していくことが、まさにいろんなステークホルダーにエンゲージしていくこと、マルチステークホルダー・エンゲージメントと一緒であると思います。

★取り組みの調査結果
 2年前にアンケート調査を行った結果では、マルチステークホルダー・エンゲージメントに取り組む会社の方が、そうでない会社より業績がいい傾向がある、ということが分かりました。
 また、マルチステークホルダー・エンゲージメントの重要性とケイパビリティ充足度は、重要性の差は日常業務においては少なく、変化または有事で大きい、という結果も出ています。日本企業は従来より「三方よし」と言われるように、ステークホルダーとのエンゲージメントについて、日常業務では十分できているということは自信をもつべきです。一方で、有事や変化に弱いということも同時に受け止めて対応することが必要です。

★アクティビストを知る
 企業に「物を言う」ことで、リターンを得るヘッジファンドが、所謂アクティビストです。アクティビストは、限定的な議決権保有ながら、他の株主への影響力などを通じて株価上昇を実現し、利益を得ることを目指します。いまや、日本はアメリカに次いでアクティビストが活発な国です。
 アクティビストの投資姿勢には、次のようなものがあります。

  1. 投資目的
      短期~中期での株主利益の最大化
  2. 投資対象
      財務的、事業的な課題のある企業
  3. 投資手法
      多くの場合、株式取得率は5%以下、議決権にレバレッジ
  4. 交渉方法
      理詰めのロジックを構築、エンゲージメント時には公開キャンペーンを通じて揺さぶりをかける場合もある

    アクティビストとの戦略的エンゲージメントにおける要諦は、以下の通りです。
  5. 水面下での協議を追求する
  6. 対話を通じて、自社の価値創造に向けた道筋をより明確に描く
  7. 公開キャンペーンに備えた準備は進めておく
  8. 適切なアドバイザー陣を起用する