★サルコペニア
筋肉が衰えると、次のようなことが起こります。
- 疲れやすくなる
- 歩くのが遅くなる
- 転倒しやすくなる
- 平均余命が短くなる
- 生活の質(QOL)が低下する
- 病気になりやすくなる(糖尿病、認知症、骨粗鬆症、関節症、感染症(誤嚥性肺炎など)、脱水、熱中症など)
- 認知機能が低下しやすくなる
男女とも、50歳ぐらいから筋肉の量が減ってくることが分かっています。そして、あるレベル以下になった場合に、大きな問題が出てきます。それを「サルコペニア(Sarcopenia)」と呼びます。ギリシャ語のSarx(筋肉)とPenia(低下)を合わせた造語です。
身体機能が低下すると、転倒しやすくなり、その結果、要介護ということになります。このようにならないためには、加齢はどうしようもありませんが、病気の管理をきちんとすると同時に、運動不足、栄養不足にならないようにして、筋力の低下を防ぐような生活を送る必要があります。
★サルコペニアに気づくきっかけ
私たちのAWGS(Asian Working Group for Sarcopenia)は、2014年にサルコペニアの診断基準を示し、2019年には以下の改訂版を出しました。
1.筋肉量の低下
2.筋力の低下(握力:男性28 kg未満、女性18kg未満)
3.身体能力の低下(歩行速度:1m/秒未満,SPPB:9点以下、5回椅子立ち上がり:12秒以上)
サルコペニアに気づくきっかけは、次のようなことです。
【超早期】
- 慢性疾患を持っている(糖尿病、COPD、心不全、腎不全)
- 立ったままで靴下がはけなくなった
- 5回椅子立ち上がりに10秒以上かかる
- 階段を1段飛ばして駆け上がれない
【早期】
- 指輪っか
- 息切れしやすくなった(心臓、肺は大丈夫)
【すでにサルコペニア】
- ペットボトルの蓋が開けられない
- 横断歩道が青の内に渡りきれない
★栄養と運動
筋肉が衰えた場合、今のところ治療のお薬がないので、「栄養」と「運動」しかありません。
サルコペニア高齢者には、次のような栄養と運動が必要になります。
【栄養】
- 適正なエネルギー量の摂取
- たんぱく質摂取量:1.2~1.5g/kg/日(重症の腎臓病は除く)
※たんぱく質を多く含む食品:シラス、鰯、マグロ、牛肉、鶏肉、豚肉
- ビタミンD摂取量:20~25μg/日
※ビタミンDを多く含む食品:鮭、サンマ、カンパチ、卵、しめじ、椎茸
【運動】(筋トレと有酸素運動の組み合わせ)
- レジスタンス運動
中等症の場合には週1回から
軽症の場合には週2〜3回
- 有酸素運動
まずは10分歩行から開始し、8000歩を目標
- バランス訓練
★筋トレとウォーキング
筋力向上には、「筋トレ」と「ウォーキング」が大事です。
【筋力トレーニング】
- 主要な筋(抗重力筋)をすべて鍛えられるよう8〜10種目の運動を実施する
- ややきついと感じる強度で10~15回実施する
- 運動強度は、最初は最小レベルから開始
- 個人の状態に応じて強度を変更
- 週に2回、48時間以上の休息をあける
- 1回20~30分程度の時間で収まる程度にする
- 呼吸や運動速度が一定の状態でできる運動にする
- 痛みのない範囲で行う
【ウォーキング】(有酸素運動)
- 運動強度は低いレベルから開始
- 個人の状態に応じて強度を変更
- 1日30分程度の中強度活動を推奨
- 30分の運動を分割して実施しても良い
- 週に3回は運動を実施したほうが良い
★お金だけでなく筋肉もためよう
筋肉の衰えは40~50代にかけて始まります。
やはり気づきが必要です。もし気になったら、できれば医療機関で握力を検査してください。または「5回椅子立ち上がりテスト」の時間を計ってみてください。
高齢期になったら、たんぱく質やビタミンDをしっかり摂ることが大事です。食事をするためには、歯も大事です。
50代からはしっかり筋トレをしてください。若いときからお金だけでなく、筋肉もしっかりためて、ぜひ健康寿命の延伸を図っていただきたいと思います。