★レアアース泥とマンガンノジュールの発見
私たちが南鳥島EEZ(排他的経済水域)で見つけた「レアアース泥」について、そして2か月ほど前にニュースになった、日本財団と私たちとの「マンガンノジュール」の開発計画についてお話をさせていただきます。
2010年に中国の漁船が尖閣諸島沖で日本の海上保安庁の船に衝突した事件において、中国は報復としてレアアースの輸出を停止し、日本だけでなく世界中で「レアアースショック」が起こりました。このような状況の中、翌2011年、私たちは全く新しいレアアース資源が太平洋の海底に大量にあることを発見し、それを『ネイチャー・ジオサイエンス』誌に発表して、世界に大きな衝撃を与えました。続く2012年、2013年には日本のEEZである南鳥島周辺海域で世界最高品位のレアアース泥を確認し、これも新聞の一面トップを飾りました。さらに2016年には「マンガンノジュール」というバッテリーメタル(コバルトやニッケル)の資源が同じく南鳥島EEZ内に大量にあることを見出し、これも大きなニュースになりました。
★レアアースは経済安全保障上の重要資源
レアアースが、なぜそんなに重要な資源なのかというと、あらゆるハイテク製品に使用されているからです。日本は中国から年間500億円分のレアアースを輸入し、その100倍の付加価値を付けて、5兆円の製品にしています。この経済規模はGDPの1%に相当し、日本の極めて重要な産業となっています。
このようにレアアースは、我が国の経済安全保障上からも極めて重要な資源なのです。日本だけでなく、各国でこの資源の脱中国化を模索していますが、それを解決するには、私たちが南鳥島で見つけたレアアース泥を開発すること以外にないと考えています。
★レアアース泥の特長
レアアース泥の特長としては、以下のようなことが挙げられます。
★日本は「レアアース大国」
私たちの研究により、南鳥島EEZのたった1%未満の海域だけで、レアアース資源量が1600万トンもあることが分かっています。これだけで世界埋蔵量の第4位に相当し、南鳥島全体では中国を抜いて圧倒的な世界第1位になるでしょう。日本は「レアアース大国」なのです。
先ほどレアアースを5兆円産業と言いましたが、南鳥島レアアース泥開発によって、それを10兆円、20兆円産業にしようと考えています。
私は、レアアース泥およびマンガンノジュールの開発を推進するため、東京大学に「レアアース泥・マンガンノジュール開発推進コンソーシアム」を設立し、現在約40の日本を代表する大企業や機関に参加していただいています。
自民党も早い段階から、レアアース泥を開発することを政権公約に入れていただいており、国としてもこの資源開発を成し遂げようとしています。しかし、中国も南鳥島周辺海域の調査を精力的に行っており、このままだと確実に中国に先を越されてしまいます。日本はいち早く南鳥島の資源開発を実現させる必要があります。
★マンガンノジュールを引き上げる
「マンガンノジュール」もバッテリーメタル資源として注目されている海底資源です。日本財団の笹川会長にお話ししたところ、その開発をサポートしようと言っていただきました。
今年の4~6月に日本財団と東大とで実施した航海調査により、ノジュールが広範囲かつ高密度で分布する開発有望海域を特定することができました。有望海域全体での存在量は約2.3億トン、コバルト資源量は約61万トン、ニッケル資源量は約74万トンと見積もっています。今回発見した有望海域(南鳥島EEZの面積のわずか2%)だけで、日本の年間消費量の75年分以上のコバルト資源が存在することが分かっており、産業として成立するだけの十分な量があることが判明しました。
今後、海外の企業とも連携し、実際に南鳥島でマンガンノジュールを引き上げる予定です。目指しているのは1日に数千トン、2年後にはこの実証試験を実施できると思っています。
最後に、私たちは東京大学基金「南鳥島レアアース泥・マンガンノジュールを開発して日本の未来を拓く」を設置し皆様からのご寄付も募っていますので、よろしくお願いいたします。