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★南鳥島EEZに分布するマンガンノジュール
私が考えていることは基本的に一つです。「日本をどうやって復活させるか」、それに尽きます。本来、政治家や官僚が考えなくてはいけないことを、大学教員の私が考えなくてはいけない、それぐらい日本の状態は危機的だと思っています。
昨年8月にここでお話しさせていただいた直前でしたが、日本財団と私たちとで南鳥島周辺の100km×100kmの海域を探査して、マンガンノジュールという資源が非常にたくさんあることを見つけました。南鳥島のEEZ(排他的経済水域)、これは南鳥島から半径370kmの範囲ですが、日本が資源開発などの権利を持つ水域となります。そのうちのたった2%のエリアだけで、日本が必要とするコバルトの75年分が存在するのです。南鳥島EEZ全域だと、ほとんど無尽蔵にあると私たちは考えていて、問題はこのマンガンノジュールを開発できるかどうか、ということにかかっているのです。
★今こそアメリカと協働する絶好のチャンス
いまトランプ政権は、自国の安全保障確保のため、レアアースの権益確保に躍起になっています。ウクライナの鉱物資源に関する協定の話もそうですが、グリーンランドを獲得したいと表明するなど、非常に活発な動きを見せています。その理由は、良質なレアアースの資源を確保したいためです。
トランプ政権の閣僚のルビオ国務長官やラトニック商務長官も、以前から海底資源開発の推進を主張してきた人たちです。ついこの間も、トランプ大統領は「海底資源開発産業の振興」を目的とした大統領令に署名しました。
こうした動きが次々に出てきています。今こそ海底資源開発に関して、日本とアメリカが協力・協働する絶好のチャンスです。レアアースは南鳥島EEZ内にいくらでもあります。南鳥島の資源開発をアメリカと協同でやるべきです。私はすでに自民党の何人かの議員の方にそういう話をしています。ただし深海の資源を引き揚げる技術は、アメリカやヨーロッパの企業は持っていますが、日本にはありません。
その技術は、海底の石油開発で長らく使われてきた「加圧式エアリフト」という方法で、圧縮空気を送り込んで浮力を与え、泥と海水が混ざったものを引き揚げる技術です。それはすでに完成しています。レアアース泥を採る技術は基本的には海外にあるのです。日本はそれを借りてくるだけでいいのです。
我々は、このレアアース泥を開発することによって、年間10兆円の産業を興そうと考えています。レアアース泥を採ること自体が重要なのではなくて、安定的に生産した国産レアアースを国内のサプライチェーンに供給することで、日本はどんどんモノ作りをやるべきだと思っています。
★石破政権でも海底資源開発を推進
私は、レアアース泥やマンガンノジュールという資源を開発することで日本を復活させようと、日本の名だたる企業に声をかけて、2014年に「東京大学レアアース泥・マンガンノジュール開発推進コンソーシアム」というのを立ち上げました。現在第11期目に入り、44の企業・機関が参加し、さらに拡大中です。
自民党は新藤義孝議員を中心に、レアアース泥に力を入れると安倍政権のときからずっと言っています。いま石破政権になってからも、レアアース泥等の国産資源開発を推進すると謳っています。
★深刻な中国の動き
世界の動きとしては、海底鉱物資源は極めて重要な資源であり開発すべきだという意見の一方で、環境保護を名目にグリーンピースなどの過激な保護団体が開発反対を訴えています。フェイク論文も出たりしています。これは、陸上資源の既得権益を守るために、資源メジャーが環境保護団体を支援しているのではないか、というのが私の見立てです。
もう一つ深刻なのは中国の動きです。自国のEEZ内に有望な海底鉱物資源が確認されているのは、世界で南太平洋のクック諸島と日本だけです。中国は今年に入ってこのクック諸島に手を伸ばし、海底資源探査や気候変動対策で協力するという合意文書を公表しました。
また、昨年12月1日の読売新聞では、今年8月に中国が南鳥島EEZ近傍の公海上でマンガンノジュールの採鉱試験を行うという報道がされました。このままでは南鳥島近海の資源は、中国に先に開発されてしまうことになり、事態は非常に深刻です。
★子供たちへの教育も
私が海底資源開発のほかに、もう一つ力を入れていることは子供たちへの教育です。
工学の魅力や研究の楽しさを伝え、中高生(特に女子中高生)の進路選択に役立てるために、この2年間で全国64の学校を回り、約26,000名の子供たちに直接話をしてきました。
また、不動産会社のヒューリックと東京大学の社会連携講座として、ひとり親世帯や経済的困窮家庭の子供たちが、気軽に自然体験学習に参加できる機会を提供しています。
なお、6月15日には安田講堂で、東京大学メタバース工学部ジュニア講座「東大工学部×ドラゴン桜〜人生を変えろ! 東大へ来い!!〜」を開催予定です。
最後に、東京大学基金「南鳥島レアアース泥・マンガンノジュールを開発して日本の未来を拓く」も引き続き行っていますので、ご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。