卓話概要

2020年02月04日(第1721回)
国連UNHCR協会 事務局長
星野 守氏

世界の難民情勢と国連UNHCR協会の活動について~中東ビジネスの経験をふまえて

★民間の公式支援窓口として

 「国連UNHCR協会」というのは、日本の特定非営利活動法人(NPO)です。
 UNHCRは国連難民高等弁務官事務所(The Office of the United Nations High Commissioner for Refugees)の略称で、1950年に設立された国連の難民支援機関です。
 昨年亡くなられた緒方貞子さんは第8代高等弁務官で、1991~2000年まで10年間にわたってご活躍されました。
 緒方貞子さんが退官の年、2000年10月に、日本の民間社会からもUNHCRを支えていこう、難民支援への貢献を果たしていこうということで、民間の公式支援窓口として、特定非営利活動法人 国連UNHCR協会が設立されました。
 今年で設立20年になりますが、私たち国連UNHCR協会は、国連の公式の日本の民間部門における支援窓口として、民間社会に向けての広報・啓蒙活動と資金調達活動を行っています。
 昨年は40億円近い金額を、個人・団体・企業などさまざまな方々からご支援いただきました。支援者の数は15~6万人で、しかも毎月継続的に寄付をしていただいている方の数が、昨年8月に10万人を超えています。日本のこういった支援に対しては、国連も非常に評価しており、感謝の意を表明しています。

★中東の人たちに恩返しをしたい

 私は三菱商事出身で、40年前に会社からの留学生として、初めてエジプトのカイロに行きました。ちょうどイラン・イラク戦争が勃発した時期で、たいへん緊張感のある地域に来たという実感がありました。
 その後、サウジアラビア、ヨルダン、イラク、ドバイなどでエネルギーやインフラ関係の仕事などをしてきました。
 日本は、先進国の中でも飛び抜けて、中東の石油やガスなどのエネルギーに依存しています。そうした中で、中東でも数多くの難民が発生しています。日本は中東から経済的な恩恵を受けているわけですから、そういう地域の問題には目を向ける必要があるのではないか、と私はいつも仕事をしながら考えていました。
 私は中東に4回駐在しましたが、危険なテロがある中で、現地の人々や一緒に仕事をした仲間たちにいろいろ助けてもらいました。彼らに対する感謝の気持ちもあって、恩返しをしたいと思い、三菱商事を退職し、2017年にUNHCRの事務局長の仕事の募集があったので、応募してその職に就くことになりました。

★難民と国内避難民

 難民とは、「人種、宗教、国籍、政治的意見や、または、特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた人々」という定義があります。
 ただ一方で、最近では、国内の安全な所に逃れる「国内避難民」という人々が、むしろ難民よりも多くなっています。命の危険にさらされたり、いろんな迫害を受けていることでは同じなので、そういった人々を全員対象としているのが、今のUNHCRの活動です。
 今年2020年、UNHCRが対象とするべき、UNHCRの支援・救済を必要としている人の数は、国外に出た人、あるいは国内にとどまっている人を含めて、8,000万人を超えています。しかも、年々数百万の単位で増加しているので、いずれ1億人に達するのではないかと危惧されています。

★UNHCRの難民支援

 UNHCRの活動地域は135か国に及び、職員数は12,000人、緊急時には72時間で対応、ノーベル平和賞は2回受賞しています。
 緒方貞子さんが亡くなられたことは非常に残念ですが、私たちとしても、緒方さんの遺志を引き継いで、しっかり活動していかなければなりません。緒方さんの偉大なる業績は、国内避難民をUNHCRの支援対象にしたということです。これは日本人の誇りです。

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【UNHCRの難民支援】
*〈緊急支援〉
 難民・国内避難民は、ほとんど何ももたずに避難してきます ⇒ [難民登録、シェルター、水、医療、食糧支援]
*〈中・長期支援〉
 故郷へ帰る日を望みながら、厳しい避難生活が続きます ⇒[メンタルケア、教育支援、自立支援(職業訓練)]
*〈恒久的な解決に向けて〉
 避難生活が終わるとき、ゼロからの生活再建が必要です ⇒[故郷への帰還、避難先での定住、第三国定住]

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 私たちは、ウェブサイトでいろいろな情報にアクセスしていただいたり、寄付を募ったりしていますが、街頭でのキャンペーンも実施しています。北は北海道・札幌から、南は九州・福岡まで、1日に全国で15か所、さまざまな場所でお声掛けをしています。こうした活動のおかげで、昨年は24,000人以上の方が、私たちのサポーターに参加していただきました。皆様もご支援のほどよろしくお願いいたします。