卓話概要

2024年01月16日(第1843回)
フィンランドの専門家
ラウラ・コピロウ氏

6年連続世界幸福度ランキング1位の国フィンランドのライフスタイルと暮らし

★フィンランドは「おうち時間」の長い国
 私はフィンランドのエスポー市出身で、日本在住歴13年です。現在、フィンランド企業の日本におけるビジネスサポートやフィンランドのライフスタイルを発信する活動などを行っています。
 フィンランドは、フィンランド語でSUOMIと言います。フィンランドは森と湖の国として有名です。フィンランドには湧き水は出ませんが、湖がいたるところにあって、たいへん身近な存在です。
 フィンランドは寒い国というイメージがあると思いますが、実は四季があります。春は新緑の季節です。フィンランドの文化に桜はありませんが、春を楽しむという気持ちは、日本人と変わらないと思います。オーロラを見るには、9月から3月までがベストシーズンです。
 気温の違いだけでなく、季節によって日照時間も日本とはたいへん異なります。23時でも明るい白夜があれば、極夜といってほとんど1日中暗い季節もあります。しかし、このことがフィンランドの暮らしとライフスタイルのポイントになっているのではないかと思います。フィンランドは「おうち時間」の長い国です。そのため自分の身の回りを快適にしようとして、インテリアを意識して自分らしい空間づくりに力を入れてきました。

★人が資源
 フィンランドは、高い幸福度と経済が両立している国です。定時に帰って、残業はほとんどありません。有給消化率は、ほぼ100%、それでも1人当たりのGDPは日本の1.5倍となっています。
 フィンランドは、人に投資する、イノベーションの国でもあります。フィンランドの生活とライフスタイルの背景には、「人が資源」という考え方があります。フィンランドには森林と水は豊富にあるのですが、それ以外にこれといった資源がありません。そのため人に投資するのです。教育、デザイン、イノベーションなどさまざまな分野において、「人が資源」という考え方に基づいて、人に投資します。

★高い相互信頼度
 フィンランド人は、仕事も休みも同じぐらい大切だと考えています。仕事は、プロセスでなく、成果・結果で評価されます。
 こうした背景には、フィンランドの世界トップレベルの「相互信頼度」というのがあります。このことが税金の払い方にも大きく影響していると思っています。お互いが信頼し合っているので、税金を国に預けて、それが形を変えて自分の元に戻ってくる、という安心感があるのです。
 フィンランドでは、会議などで議論して、相手と意見が対立しても、それは議論の上だけで、会議が終わるとお互いに仲良くできます。
 組織はフラットで、上司に対してもファーストネームで呼んだりします。年齢や地位にかかわらず、平等が行き渡った職場になっています。
 フィンランドの企業では、昼休み以外に休憩を取るのが法律で決まっています。その時間にみんな「コーヒー休憩」を取ります。この休憩時間の自由な会話が、イノベーションにつながるという研究もあります。
 フィンランドの学校では、択一式問題はほとんど出題されなくて、自分で主体的に考えることに重きが置かれています。その背景には、自分がどう思っているか、“why”を常に聞かれるという教育方針があります。

★“good enough”の暮らし
 フィンランドのデザインは、人にために作られていて、それも特別な日のために取っておくものではなく、毎日を特別な日にしてくれる存在だと思っています。
 日本語に「衣食住」という言葉がありますが、フィンランドでは「住食衣」という順番になると思います。それは外に見せるより、自分の身の回りを快適にすることに重きを置いているからです。
 日本では「丁寧な暮らし」といって、丁寧にしようと頑張りすぎるような気もしますが、フィンランドでは、ほどほどに手を抜いて、自分らしい暮らしを大切にします。“good enough”──これぐらいでいいよね、という暮らしです。

★フィンランドの幸せとは
 フィンランドの幸福度が6年連続世界一になっていますが、私が日本で13年暮らして、フィンランドを外から見て、「フィンランドの幸せとは」と感じたのは、以下のようなことかなと思います。
①教育も仕事も、「人が資源」という考え方が基本にある。
②「人は皆違う」という考え方があるので、人に対して「寛容」。
③「相互信頼度」が高い。
④幸せの基準が「シンプル」。春になっただけで、みんな「いいね!」と言って喜ぶ。
 背景にある社会やライフスタイルがしっかりしているので、小さなことでも満足度が高いのではないかと思います。