卓話概要

2022年03月22日(第1778回)
元駐日米国大使館 首席補佐官
ジョセフ・シュメルザイス氏

前職:駐日米国大使首席補佐官の見聞録/現職:ジャパニーズウイスキーの人気の元

★どのようにして首席補佐官になったか
 私は22歳のとき、ロータリー・インターナショナルの奨学金を受けて、台湾に留学しました。
私にチャンスを与え、人生を変えてくれたロータリーにいつも感謝しています。現在は東京ロータリークラブの会員です。
 日本から他国へ駐在する大使のほとんどは、上級官僚です。しかしアメリカの場合、大使の30%は米国大統領によって選ばれた政治任用職です。駐日米国大使は通常、そのような政治任用職です。
 最近では、バイデン大統領はラーム・エマニュエル氏を駐日大使に任命しました。彼は民主党で大きな存在感がある大物です。彼はオバマ大統領の最初の首席補佐官であり、その期間中、バイデン副大統領と親しくなりました。
 トランプ大統領は日本の大使に、ビル・ハガティ氏を任命しました。ハガティ氏は1989年から91年に日本に住み、1991年から92年にブッシュ大統領の政権でホワイトハウスで働き、2016年の大統領選挙でトランプ候補を強固に支援した、テネシー州出身の成功した事業家です。
 アメリカにとって最も重要と評価されている5つの大使館の大使は、シニア・アドバイザーまたは首席補佐官の立場で大使と協力するために、追加の政治任用職を1人選ぶことができます。この任用職はホワイトハウスによって承認され、極秘のセキュリティ・クリアランスの検査に合格する必要があります。
 それ以上に、候補者が大使から信頼されさえすれば、特別な資格や要件はありません。私はハガティ大使に選ばれ、ホワイトハウスに承認されたことを光栄に思います。
 私は1989年に在日米国商工会議所でハガティ氏と知り合いました。そして2人ともイーグル・スカウトであることを知ったとき友人になりました。

★大使館の3つの主要な仕事
 首席補佐官は、目立たない役割です。公に声明を出すことはなく、通常はカメラを避けます。しかし首席補佐官は、大使の使命を確実に成功させるために、できる限りのことをしなければなりません。
 多くの人がイメージする、パスポートやビザを発行したりするのは領事部の仕事で、それら以外の大使館の仕事は、大使の配慮を必要とする、次の3つの主要なカテゴリーに分けることができます。
①安全保障、日米同盟
②経済関連:貿易、双方向の直接投資の斡旋等
③その他の交流:留学、宇宙、スポーツ等

①安全保障、日米同盟
 私たちはいつも、日本はとても危険な地域にあると言っています。日本は、北にロシア、西に北朝鮮、そして西の地平線全体に沿って中国に囲まれています。これらの国は、陸・海・空、そして宇宙・サイバースペース・電磁スペクトルの6つの領域で、私たちの同盟に脅威をもたらします。
 今年、ウクライナで起こっていることに注目すると、すべての同盟国が協力して、ロシアの行動を抑止する力を示すことが、改めて不可欠であることが分かります。
②経済関連:貿易、双方向の直接投資の斡旋等
 大使と大使館のスタッフの主な役割の一つは、50の州の経済開発事務所のスタッフと、日本企業の本部との間のコミュニケーションを促進することです。2019年5月、ハガティ大使は、日本を代表する28名のCEOを招待し、トランプ大統領からの感謝を伝えるためのレセプションを主催しました。
③その他の交流:留学、宇宙、スポーツ等
 私たちは常に、日米のお互いの成功を共有し、祝うことを目指しています。
 日本人ドライバーとして初めてインディ500のレースで優勝した佐藤琢磨さんを招待しました。また2019年の独立記念日は、アポロ11号の月面着陸から50周年でもありました。私たちは7人の日本人宇宙飛行士を招待して、それを一緒に祝いました。
 最も記憶に残る出来事の一つは、2019年5月にトランプ大統領が初めて大相撲を観戦し、優勝力士に大統領杯を贈ったことでした。

★日本人の味覚と職人技との組み合わせ
 ジャパニーズウイスキーのおいしさは、日本の水から来ているとよく言われますが、私はそうは思いません。ジャパニーズウイスキーをこれほど特別なものにしているのは、日本人の味覚と職人技との組み合わせだと考えています。
 埼玉県秩父市にある会社「ベンチャーウイスキー」の創業者である肥土(あくと)伊知郎さんは、新世代のジャパニーズウイスキーの職人の中で、最も有名な人物の一人です。
 彼のウイスキーは世界中で人気があり、入手するのは非常に困難です。彼の水は井戸水ではなく、埼玉の水道局のものです。
 私たちの会社「CEDERFIELD」は、ケンタッキー州のバーボンの伝統に由来しています。もし100年前に、「日本のウイスキーの父」と呼ばれる竹鶴政孝さんが、スコットランドではなくアメリカのケンタッキーで学んでいたら、今日のジャパニーズウイスキーはどんな味がするでしょうか──この質問に答えることを私たちの目標にしています。ご期待ください。