卓話概要

2020年02月18日(第1722回)
塚田都市・情報研究室
塚田 博康氏

明日の東京は

2020年7月5日に東京都知事選挙

 今年の7月5日(日)に東京都知事選挙があります。東京オリンピック・パラリンピック(7/24~8/9)の直前です。実は、小池都知事の任期は7月30日までですが、オリンピックと選挙を一緒にやるわけにはいかない、ということで、そういう日程になったわけです。
 小池さんは今のところ出馬を表明していませんが、本人はやる気満々です。対抗馬はまだ誰も出馬の意思を表明していませんので、小池さんの独走状態です。
 小池さんの出馬が確実視されているのは、小池さんがすでに2020年度の予算案を都議会に提出していること、昨年12月に「未来の東京」戦略ビジョンなるものを発表し、これは2020年秋以降策定の「都長期計画」の大綱になるものであること、最近、矢継ぎ早に新規施策を発表していること、そして村山寛司元副知事の「特別秘書」任用、宮坂学ヤフー元会長の副知事就任、などがその理由です。

★次期都知事を直ちに待ち受ける諸問題

 次の都知事がすぐに直面する問題は、まず新型コロナウイルス感染症対策です。今の流行状態でオリンピックが開催できるのかどうか、何とか7月までに収束させなければいけません。
 もう一つは、五輪でのテロ対策です。特にサイバーテロを防げるかどうかという問題。
 またオリパラ開催中、企業活動が停滞するのではないかということ。
 それから台風など異常気象の問題です。

★オリパラ後の経済状況

 オリパラに投入されたお金は、約3兆円です。関連ハード整備が終了した後をどうするか、という問題があります。
 消費税増税以後の景気状況が良くないこと、それに感染症の影響で企業活動に支障が出てきています。
 東日本大震災復興事業が一段落し、経済活動が縮小されるのをどうするか。
 安倍首相が盛んに言っている「国土強靭化事業」と財政健全化をどうやって両立させるのか。
 今年11月3日にアメリカ大統領選挙が実施されますが、その結果によってどのような影響が出るのか、ということも考えなくてはなりません。

★東京都の財政展望

 東京都の財政基盤は、実際には脆弱です。景気動向に非常に左右されます。
 東京都は、47都道府県のうち、国から地方交付税交付金をもらっていない唯一の自治体です。
 政府は「税収不均衡是正措置」というのを行って、東京と地方との均衡を図っていますが、それによって東京都は8000億円以上のお金を拠出しています。
 小池都政になって、高等学校の授業料免除などの細かい支出が増えていますが、もっと財政のけじめが求められるのではないかと思います。

★東京都の重い課題

 東京都にはお金が必要です。まず、30年以内に70%の確率で起きると言われている東京直下地震対策です。
 次に、集中豪雨と河川氾濫。地球温暖化による台風被害と局所的集中豪雨への対策。
 少子高齢化の進行と生産人口の減少の問題もあります。2015年と2040年を比較した東京都の資料がありますが、総人口はほぼ同じですが、15~64歳の生産人口が50万人減少するのに対し、65歳以上の高齢者は70万人近く増加します。
 異次元情報化の問題。AI(Artificial Intelligence)、5G、IoT(Internet of Things)、SDGs(Sustainable Development Goals)などです。従来の高度情報化とはレベルが違います。
 国際化の進行と多民族化の問題。2008年には39万0321人だった外国人が、10年後の2018年には52万1500人に増加しています。最も多いのは、中国・台湾で、以下、韓国・朝鮮、フィリピン、ベトナム、ネパールと続いています。
 こうしたさまざまな政策を支えていくための東京都の財政はどうなのか。
 内閣府の統計(2016年)によると、県内総生産の全国総計は549兆8660億円で、そのうち東京都の総生産は103兆8050億円(18.9%)です。それに対して、都道府県別国税徴収状況(国税庁、2018年度実績)によると、全国の税収が68兆6406億円、そのうち東京都は28兆4117億円(41.4%)の税金を納めています。つまり、日本の国税の4割強は、東京都が納入しているのです。
 とすると、もし東京都が自然災害等で大きな影響を受けたとき、国家財政自体がもつのかどうかということになります。このように、自然災害への脆弱性をもった東京都に、過剰に依存する国家財政を考えたとき、東京都の「強靭化」に対して、もっと集中投資すべきではないかと思うのです。