卓話概要

2026年06月16日(第1933回)
田無南口クリニック院長・ 元金沢大学医学部特任教授
大竹 裕志氏

メタボリックシンドロームは どうなっているのか?~コロナ・インフルエンザの陰に隠れて!

★コロナと「もう一つのパンデミック」
 コロナ後、メタボリックシンドロームの方が急増しています。2020年、メタボ該当者の増加率が、例年の2倍以上に跳ね上がった事実があります。
 その理由の一つとして挙げられるのが、リモートワークがもたらした「静かなる危機」です。通勤・移動による日常的な身体活動量が激減したことと、ストレスによる過食の連鎖によるもので、4人に1人に体重増加が見られ、生活習慣病予備軍(脂肪肝など)が急増しているのです。
  座りっぱなしの長時間化×漠然とした不安(ストレス過食)=内臓脂肪の急拡大
 運動不足と「コロナ太り」が、私たちの血管を秘かに蝕んでいる、と言ってもいいと思います。

★内臓脂肪と皮下脂肪は全く違う
 日本人の総摂取カロリーは、2095kcal(1950年)から2000kcal(現在)へと減少しています。それに対して、動物性脂肪の摂取量は、過去70年で約5倍に激増しています。
 カロリーを減らしても「動物性脂肪の過多」と「モータリゼーション」による「運動量低下」が重なり、見えない内臓脂肪が蓄積し続けているのです。
 「内臓脂肪」と「皮下脂肪」は全く違うものです。皮下脂肪はあまり健康に害は及ぼしません。一方、内臓脂肪は、「脂肪肝」などのようにお腹の中にあるもので、お腹に潜む「毒の工場」とも呼ばれています。
 ぽっこりお腹の正体である内臓脂肪は、ただの「重り」ではありません。大量に蓄積すると、血圧を上げ、血糖値を上げ、血管を傷つける「悪い物質」を全身に撒き散らす「毒の工場」に変化します。くすぶっている炎のようなもので、「かくれ炎症」とも言われます。

★メタボリックシンドロームのリスク
 メタボリックシンドロームになると、「心血管疾患リスク(脳梗塞・心筋梗塞・狭心症など)」は約2倍に増大、「慢性腎臓病発症率」も約2倍に、そして最近分かってきたことですが「認知症発生率」は最大6.2倍に増加します。また「肝臓への影響」は、NASH・肝硬変・肝がんへの進行リスクが増大します。
 メタボが進行するのは20年、25年と長い時間がかかりますが、メタボは単一の病気ではなく、全身の臓器が同時に破綻していく、不可逆的な「マルチ・オルガン・フェイラー(多臓器不全)」への入り口なのです。
 現在の「メタボ」診断基準は、以下のようになっています。
【腹囲】
 男性85cm以上/女性90cm以上
【血圧高値】
 上130/下85mmHg以上
【高血糖】
 空腹時血糖110mg/dL以上
【脂質異常】
中性脂肪150以上またはHDL(善玉)40未満

★ダイエットにおける「8:2の黄金比」
 メタボから脱するには、体重を落とすしかありません。そして体重を落とすための基本は「ダイエット」になります。
 ダイエットにおける「8:2の黄金比」というのは、食事(80%)、運動(20%)です。運動だけでは体重は落ちないのです。
【① 食事】
 極端な制限ではなく、10%の削減と血糖値のコントロールをしましょう。

  • 1日の摂取エネルギーを「10%だけ」減らす。
  • 経営指標のように「計量・記録(レコーディング)」する。
    【② 運動】
     脂肪を燃やす手段として、運動だけでは非効率すぎます。ランニングシューズを履く前に、食事の量を測るべきです。
     ただし、ウォーキングや軽いジョギングなどの有酸素運動をすると、必ず内臓脂肪は落ちます。ところが皮下脂肪はすぐには落ちないので体形は変わらない、これがダイエットが続かない理由の一つです。
     しかし、今より毎日「10分(約1000歩)」多く体を動かす「+10分」を1年続けるだけで、1.5~2.0kgの内臓脂肪減少効果が期待できるのです。
    【③ 睡眠】
     自律神経のマネジメントが、暴走しがちな食欲を止めます。

★明日から始める戦略的アクション4か条

  1. 内臓脂肪への警戒
    「見た目」ではなく、目に見えない「炎症の時限爆弾」として対処する。
  2. 腹八分目と記録
    運動で帳消しにしようとせず、まずは摂取カロリーを10%減らし、記録する。
  3. 日常の「動く」を増やす
    激しい運動より、1時間ごとの「立ち上がり」と、週2~3回の軽度な活動で、代謝エンジンを回す。
  4. 焦らない
    短期的な数字の増減に一喜一憂せず、長期的なシステムとして習慣化する。